脂肪肝を改善する運動の正解は?最新研究から分かった「種類・時間・頻度」
- 髙橋 大翔
- 2 時間前
- 読了時間: 9分

健康診断で、「脂肪肝ですね」と言われたことはありませんか?
脂肪肝というと、「お酒を飲む人がなるもの」というイメージを持っている人も多いかもしれません。
しかし実際には、お酒だけが原因ではありません。
肥満や運動不足、それによるインスリン抵抗性、脂質異常などの「代謝の問題」と関連して肝臓に脂肪がたまる、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)という状態があります。
そして脂肪肝対策として非常に重要なのが、運動です。
ただ
「ウォーキングでいいの?」
「筋トレのほうがいい?」
「週何回やればいい?」
「何分やれば脂肪肝に効果がある?」
という具体的なところまでは、なかなか分かりませんよね。
2026年に掲載された研究では、まさにこの問題が詳しく検討されました。
今回はこの研究をもとに、脂肪肝を改善するためには、どんな運動を、どのくらいやればいいのか?
を一般の方にも分かりやすく解説します。
そもそも「脂肪肝」とは?
脂肪肝とは、その名前の通り、肝臓に脂肪が過剰にたまっている状態です。
肝臓は、食事から摂取した糖質や脂質を処理したり、エネルギーを貯蔵したりする重要な臓器です。
しかし
・食べ過ぎ
・肥満
・運動不足
・インスリン抵抗性(血糖値が安定しない)
・脂質代謝の異常
などが重なると、肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなります。
現在では、こうした代謝異常と関連した脂肪性肝疾患を、MASLD(Metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease)と呼びます。
日本語では、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患」です。
名前は難しいですが、「代謝の問題と関係して肝臓に脂肪がたまっている状態」
くらいに考えると分かりやすいでしょう。
961人から「脂肪肝の運動の正解」を検証
今回の研究では、MASLD患者に運動を行わせたランダム化比較試験を集めています。
対象となったのは、24研究・合計961人。
そして
・有酸素運動+筋トレ
・中強度持続運動
・高強度インターバルトレーニング
・高強度サーキットトレーニング
・レジスタンストレーニング
などを比較しました。
さらに特徴的なのが
「どの運動が効くか」だけでなく、「どのくらいやれば効くか」まで分析したことです。
その結果、脂肪肝改善のための運動量について、かなり具体的な数字が見えてきました。
結論|最も有望だったのは「有酸素運動+筋トレ」
まず運動の種類です。
今回比較された運動のなかで最も高く評価されたのが、有酸素運動+レジスタンストレーニングでした。
簡単に言えば、「ウォーキングや自転車などの有酸素運動+筋トレ」です。
研究内のランキング指標では、有酸素運動と筋トレの組み合わせが最も高い値を示しました。
つまり脂肪肝対策では
「ウォーキングだけ」
「筋トレだけ」
と一つに絞るより両方を組み合わせる方法が有望という結果です。
「METs」という運動量の単位を知っておこう
ここから今回の研究で非常に重要になるのが、METs(メッツ)という単位です。
METとは簡単に言うと、「その運動が安静時の何倍くらいのエネルギーを使うか」を表す指標です。
安静に座っている状態を
1 METs
とします。
例えば今回の論文では
中強度運動:約4.5 METs
高強度運動:約7.5 METs
を例として使っています。
そして、運動強度 × 運動時間で1週間の運動量を表したものが、
METs-min/week(METs・分/週)です。
例えば
4.5 METsの運動を30分
行えば、
4.5 × 30 = 135 MET-min/週
となります。
これを週5回行えば
135 × 5 = 675 MET-min/週
です。
この数字を使って、
「脂肪肝を改善するには、最低どのくらい運動すればいいのか?」
を今回の研究では分析しました。
最低ラインは「460 MET-min/週」
今回の研究では、臨床的に意味のある脂肪肝改善が期待できる最低運動量として
460 MET-min/週
が推定されました。
中強度運動を4.5 METsとすると
460 ÷ 4.5 = 約102分。
つまり
週100分程度の中強度運動
が一つの最低ラインになります。
例えば20分 × 週5回くらいです。
「運動するなら毎日1時間やらないと意味がない」というわけではありません。
まずは、週100分程度でも、意味のある改善が期待できる可能性がある
ということです。
効率が良かったのは「630 MET-min/週」
では、運動量を増やせば増やすほど脂肪肝が改善するのでしょうか?
今回の結果は、そう単純ではありませんでした。
運動量を増やすにつれて肝脂肪は減少していきましたが、
630 MET-min/週付近から、追加効果が徐々に小さくなっていきました。
研究では、このあたりが効果と運動量のバランスが良いポイントとして示されています。
中強度運動4.5 METsなら、630 ÷ 4.5 = 140分。
つまり、約30分×週5回です。
これはかなり現実的ですよね。
脂肪肝改善を目的とするなら、「中強度運動を30分、週5回程度」
が一つの分かりやすい目安になります。
850 MET-min/週付近で効果はほぼ頭打ちに
さらに運動量を増やしていくと、850 MET-min/週付近で効果は最大に近づきました。
中強度4.5 METsなら、850 ÷ 4.5 = 約189分。
つまり、約40分×週5回です。
研究結果を非常にシンプルにすると
最低ライン
約20分×週5回
効率の良いライン
約30分×週5回
効果が最大に近づくライン
約40分×週5回
というイメージになります。
「たくさん運動すればするほど良い」ではない
ここも今回の研究の重要なポイントです。
運動量と脂肪肝改善の関係は、一直線ではありませんでした。
最初は
運動量が増える
↓
肝脂肪が大きく改善する
という関係があります。
しかし一定量を超えると、さらに運動量を増やしても追加で得られる効果が小さくなっていきます。
いわゆる、「頭打ち」です。
今回の解析では、その最大効果に近いポイントが約850 MET-min/週でした。
ですから、「脂肪肝を治すために毎日2時間運動しなければ」
と考える必要はありません。
継続できる範囲で必要な運動量を確保することのほうが重要です。
忙しい人は「強度を上げて回数を減らす」方法もある
「週5回も運動できない」という人もいるでしょう。
今回の論文では、高強度運動を7.5 METsとして計算した例も示されています。
高強度運動なら
最低ライン
30分×週2回
効率の良いライン
30分×週3回
最大効果に近いライン
30分×週4回
程度に相当します。
つまり、運動時間を確保できないなら、運動強度を上げる
という考え方もあります。
ただし、肥満や糖尿病、心血管疾患などがある人が、いきなり高強度運動を始めるのは適切ではない場合があります。
運動経験が少ない人は、まず中強度から始めるほうが現実的でしょう。
有酸素運動+筋トレなら「640 MET-min/週」が有望
今回の研究では、運動の種類ごとにも最適量を推定しています。
特に注目したいのが、有酸素運動+レジスタンストレーニング:約640 MET-min/週です。
これが脂肪肝改善に対する有望な運動量として示されました。
その他では
中強度持続運動:約590 MET-min/週
高強度サーキット:約880 MET-min/週
という結果でした。
さらに興味深いことに、有酸素運動+筋トレでは、かなり少ない運動量から臨床的に意味のある改善に到達する可能性も示されました。
つまり、「運動量をただ増やす」より、「有酸素運動と筋トレをうまく組み合わせる」
ほうが効率的かもしれないということです。
筋トレだけでも脂肪肝に効く?
ここは筋トレをしている人なら気になるところですよね。
今回の解析では、レジスタンストレーニング単独でも改善効果は期待できるものの、明確な効果を得るには、640 MET-min/週を超える運動量が必要になる可能性が示されました。
そのため「脂肪肝改善だけを目的に筋トレだけを行う」よりも、
筋トレ+ウォーキング・自転車などを組み合わせるほうが現実的かもしれません。
なぜ運動すると肝臓の脂肪が減るの?
ここも重要です。
「肝臓なのに、なぜ運動で脂肪が減るの?」と思う人もいるでしょう。
運動すると筋肉では大量のエネルギーが必要になります。
そのため
・ブドウ糖の利用が増える
・脂肪酸の利用が増える
・インスリンが効きやすくなる
・全身のエネルギー消費が増える
といった変化が起こります。
特に重要なのが、インスリン抵抗性の改善です。
インスリンが効きにくくなると、血液中の糖や脂質をうまく処理できなくなり、肝臓にも脂肪がたまりやすくなります。
運動によって筋肉が糖を取り込みやすくなり、脂質代謝も改善すると、肝臓に脂肪がたまりやすい代謝環境そのものを改善できる可能性があります。
まとめ|脂肪肝には「有酸素運動+筋トレ」が有望
今回の2026年の研究では、MASLD患者を対象とした24研究・961人のRCTを統合し
「脂肪肝を改善するには、どの運動をどのくらいやればいいのか?」を分析しました。
その結果
最も有望な運動
有酸素運動+レジスタンストレーニング
臨床的な改善が期待できる最低ライン
460 MET-min/週
効果と運動量のバランスが良いライン
約630 MET-min/週
効果が最大に近づくライン
約850 MET-min/週
有酸素運動+筋トレの推定最適量
約640 MET-min/週
という結果でした。
中強度運動で考えると、20〜40分程度を週5回
が一つの分かりやすい目安です。
そのなかでも、30分×週5回程度
は、効果と実行しやすさのバランスを考えると現実的な目標になりそうです。
そして今回の研究で特に重要なのは、「脂肪肝だから、とにかく長時間の有酸素運動をすればいい」というわけではないことです。
ウォーキングや自転車などの有酸素運動に筋トレを組み合わせる。
そして、一気に運動量を増やすのではなく、継続できる量から始める。
脂肪肝改善では、「何をやるか」と「どのくらいやるか」の両方を考えることが重要と言えそうです。
参考文献
Tan X, Zou H, Guo M, et al.Dose-response relationship between exercise and hepatic steatosis: A systematic review with Bayesian network meta-analysis of randomized controlled trials.Journal of Sport and Health Science. 2026;15:101125.DOI: 10.1016/j.jshs.2026.101125PMID: 41534763
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