血糖値を下げる筋トレの正解は?週何回・何セット・どの強度が効果的なのか
- 髙橋 大翔
- 10 時間前
- 読了時間: 9分

札幌市豊平区中の島にあるパーソナルジムR. Physio labスタッフの髙橋です!
今回は筋トレと血糖値に関しての解説です。
「血糖値を改善するために筋トレが良い」
これは聞いたことがある人も多いと思います。
では実際に
週に何回やればいいのか?
重い重量を使ったほうがいいのか?
何回・何セットやればいいのか?
ここまで具体的に聞かれると、意外と答えるのが難しくなります。
今回紹介する研究では、過体重・肥満を伴う2型糖尿病患者を対象にしたランダム化比較試験を統合し、レジスタンストレーニング(筋トレ)の「量」とHbA1cの関係を詳しく分析しています。
その結果から見えてきたのは、
「とにかく重い重量で鍛える」のではなく、中程度の負荷で、ある程度の運動量を確保し、それを数カ月継続することの重要性でした。
そもそもHbA1cって何?
今回の研究で最も重要な指標が、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。
健康診断や血液検査で見たことがある人もいるかもしれません。
血液中には、酸素を運ぶ「ヘモグロビン」という物質があります。
血液中のブドウ糖がこのヘモグロビンと結びついたものの割合を示しているのがHbA1cです。
簡単に言えば、「ここ最近、血糖値がどのくらい高い状態だったのかを見る指標」です。
血糖値は食事や運動によってその都度変化します。
一方、HbA1cは過去1〜2カ月程度の血糖状態をより強く反映するため、糖尿病の状態を評価するときに非常に重要な指標として使われています。
今回の研究では、「どんな筋トレをするとHbA1cが下がりやすいのか?」を詳しく分析しました。
今回の研究は「筋トレの量」まで細かく分析した
今回の研究は、過体重・肥満を伴う2型糖尿病患者を対象としたランダム化比較試験を統合した、
ベイズ型ネットワークメタ解析・用量反応解析です。
少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、「筋トレをしたほうがいいのか?」
だけではなく、「どのくらいやると最も効果が出そうなのか?」まで推定した研究です。
具体的には
・週何回やるか
・どのくらいの重量を使うか
・何週間続けるか
・何種目やるか
・何セットやるか
・1セット何回やるか
・1週間で合計何回行うか
・1回何分行うか
といった要素とHbA1cの変化を分析しています。
結果① 筋トレは「週3回」が有力
まず頻度です。
研究では、週3回のレジスタンストレーニングが最も効果的と推定されました。
また、解析上は週3回以上がHbA1cを有意に低下させる有効な頻度範囲として示されました。
つまり、「たまに筋トレする」より、週3回程度を継続するという頻度が血糖管理では有望だということです。
結果② 重い重量じゃなくてもいい
ここはかなり面白い結果です。
筋トレというと、重い重量を持ったほうが効果が高そうと思いますよね。
しかし、HbA1c改善については必ずしもそうではありませんでした。
有効と推定された強度は
1RMの30〜62%
でした。
さらに、推定された最適値は
約44%1RM
です。
「1RMの44%」ってどのくらい?
1RMとは、「正しいフォームで1回だけ持ち上げられる最大重量」のことです。
例えば、あるマシンを最大100kgで1回だけ動かせる人なら
44%1RMは、約44kgということになります。
つまり今回の結果では、かなり重い重量を数回だけ持ち上げる必要はなかったということです。
血糖改善が目的なら、中程度の負荷で、ある程度の回数をこなすという方法でも十分効果が期待できる可能性があります。
結果③ 13〜18回×3セットが有力
では具体的に何回やればいいのでしょうか?
今回の解析では、1セット13〜18回程度が有効な範囲として示されました。
そしてセット数は、3セットが有力でした。
推定された組み合わせでは、18回×3セットが含まれています。
つまり、「ものすごく重い重量で5回」
というより、中程度の重量で10回以上しっかり動かすというプログラムがHbA1c改善では有望だったわけです。
結果④ 1回10種目程度
さらに今回の研究では、1セッションあたり約10種目が推定上の有望な設定として示されました。
例えば
・スクワット系
・レッグプレス系
・膝伸展系
・膝屈曲系
・胸を押す運動
・背中を引く運動
・肩を押す運動
・腕の運動
・ふくらはぎ
・体幹
など、全身を使うように構成するイメージです。
ここで大切なのは、特定の筋肉だけではなく、全身の大きな筋肉を使うことです。
骨格筋は、血液中のブドウ糖を取り込む非常に大きな組織です。
そのため、脚・背中・胸などの大筋群を動かすことで、多くの筋肉を血糖処理に参加させることができます。
結果⑤ 週1500回程度が推定上の最適値
今回の研究では、週総レップ数も分析されています。
これは、「1週間で合計何回、筋トレの反復動作を行ったか」という指標です。
有効と推定された範囲は、週1000〜2100回程度。
推定最適値は、週1500回程度でした。
ただし、この数字だけを見て、「毎週1500回やればいい」
と考えるのは適切ではありません。
例えば、10種目×3セット×18回×週3回
なら、1620レップ/週になります。
つまり今回示された週1500回前後という数字は、全身を複数種目・複数セット行った結果として積み上がる総運動量として考えると分かりやすいでしょう。
結果⑥ 1回約45分
1回のトレーニング時間については、約45分が推奨用量として示されました。
つまり、「毎回2時間筋トレしなければいけない」わけではありません。
週3回、1回45分程度。
これなら
月・水・金
火・木・土
などの形で実生活にも組み込みやすくなります。
結果⑦ 17〜23週間続ける
そして非常に重要なのが、継続期間です。
HbA1c改善に有効と推定された期間は17〜23週間。
推定最適値は約23週間でした。
23週間というと約5〜6カ月です。
つまり「1カ月筋トレしたけど血糖値があまり変わらない」という段階で判断するのではなく
数カ月単位で継続することが重要だと考えられます。
なぜ筋トレすると血糖値が改善するのか
ここも一般の方にはぜひ知っておいてほしいポイントです。
食事から摂取した炭水化物は消化され、主にブドウ糖となって血液中に入ります。
このブドウ糖を身体の細胞に取り込ませるために重要なのが、インスリンというホルモンです。
ところが2型糖尿病では、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」が問題になります。
そこで重要になるのが筋肉です。
筋肉は運動すると、エネルギー源としてブドウ糖を利用します。
さらに筋収縮そのものによって、インスリンとは一部異なる経路でもブドウ糖を筋細胞へ取り込みやすくなります。
そして筋トレを継続することで
・筋肉によるブドウ糖利用
・インスリン感受性
・筋量や筋機能
・体組成
などが改善し、結果として血糖管理に良い影響を与える可能性があります。
つまり筋肉は、「身体を動かすための組織」であると同時に、「血糖を処理する大きな受け皿」
でもあるわけです。
血糖値を下げるなら「重さ」より「継続できる運動量」
今回の研究で非常に興味深いのが、高強度トレーニングが必須ではなかったことです。
推定最適強度は約44%1RM。
そして、
週3回
約45分
10種目
3セット
13〜18回
17〜23週間
という、比較的中程度の負荷で運動量を確保する方法が有望でした。
これは糖尿病を抱える人にとって重要です。
高重量トレーニングは、関節への負担血圧上昇フォーム習得心理的ハードルなどの問題が生じる場合があります。
一方、中程度の重量なら運動経験が少ない人でも導入しやすくなります。
「重い重量を持てないから筋トレしても意味がない」
ということではありません。
研究から考える「血糖改善筋トレ」の目安
今回の結果を分かりやすくまとめると
頻度
週3回程度
強度
30〜62%1RM程度
推定最適値:約44%1RM
反復回数
13〜18回程度
セット数
3セット程度
種目数
約10種目
1回の時間
約45分
期間
17〜23週間
推定最適値:約23週間
週総レップ数
1000〜2100回程度
推定最適値:約1500回
という形になります。
ただし「この数字通りやれば絶対に下がる」ではない
ここは非常に重要です。
今回の数値は、複数のRCTを統合した統計モデルから推定された値です。
「44%1RMなら効くけど45%では効かない」
「18回なら効くけど12回では意味がない」
という話ではありません。
また、年齢/運動/経験/肥満度/糖尿病の重症度/服用している薬/関節疾患/心血管疾患/神経障害
などによって、適切な運動量は変わります。
特に糖尿病患者では、使用している薬剤によっては運動に伴う低血糖にも注意が必要です。
したがって、今回の数字は、「絶対に守る処方」ではなく、運動プログラムを設計するときの目安
として捉えるのが適切です。
まとめ|血糖改善のための筋トレは「重ければ重いほど良い」ではない
今回の研究では、過体重・肥満を伴う2型糖尿病患者に対するレジスタンストレーニングについて
「どのくらいやるとHbA1cが下がりやすいのか?」が詳しく分析されました。
その結果、推定上有望だったのは、
週3回
約44%1RM
約23週間
約10種目
3セット18回
1回約45分
週1500レップ程度
というプログラムでした。
重要なのは「血糖値を下げるためには、とにかく高重量で追い込まなければいけない」わけではない
ということです。
中程度の負荷でも、全身を使って十分な運動量を確保し、それを数カ月継続する。
これが血糖改善を目的とした筋トレでは重要になりそうです。
筋トレは、見た目を変えたり筋肉を増やしたりするだけのものではありません。
筋肉を動かすことそのものが、血糖を処理する能力を高めるための重要な健康戦略の一つです。
※本研究は過体重・肥満を伴う2型糖尿病患者を対象とした研究です。1型糖尿病や非肥満者に同じ数値をそのまま適用できるわけではありません。また、糖尿病治療中の方は薬物療法や合併症によって運動時の注意点が異なるため、主治医・医療専門職と相談したうえで運動を行うことが重要です。
参考文献
Huarui Li, et al. Optimal exercise dose for resistance training to improve HbA1c levels in overweight and obese patients with type 2 diabetes: a systematic review of randomized controlled trials and a Bayesian network meta-analysis. Front. Physiol., 12 August 2026
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