お酒を飲む人は「悪玉コレステロールが正常」でも安心できない?5万人超の日本人データから見えた“見えにくいLDL”と飲酒の関係
- 髙橋 大翔
- 2 時間前
- 読了時間: 7分

健康診断で、LDLコレステロールはそれほど高くないから大丈夫
と思っている人も多いのではないでしょうか?
一般的にLDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、動脈硬化のリスクを評価する代表的な血液検査です。
しかし、LDLには実はいくつかのタイプがあります。
2026年に発表された研究では、日本人55,745人の健康診断データを使い
「脂肪性肝疾患」と「飲酒」が、small dense LDL-C(sdLDL-C)とどのように関係しているのか?が調べられました。
結果として興味深かったのが、「脂肪肝との関連」と「飲酒との関連」では少し違った結果が出たことです。
そもそもLDLコレステロールとは?
まず、一般的な健康診断でも測定される「LDL-C」から説明します。
コレステロールは、そのままでは血液の中を移動できません。
そこで「リポタンパク」という粒子に乗って全身を移動します。
その一つがLDLです。
LDLが増えすぎると、血管の壁にコレステロールが蓄積しやすくなり、長期的には動脈硬化につながる可能性があります。
そのため、「LDL-C=悪玉コレステロール」
と呼ばれることが多いわけです。
ただし、LDLはすべて同じ大きさではありません。
今回注目された「sdLDL-C」って何?
今回の研究で重要なのが、
small dense LDL-C(sdLDL-C)
です。
日本語にすると、
「小型で密度の高いLDLに含まれるコレステロール」
です。
名前の通り、一般的なLDL粒子よりも「小さくて密度が高い」という特徴があります。
sdLDLは
・血管壁へ入り込みやすい
・血液中に長く残りやすい
・酸化などの変化を受けやすい
といった性質から、動脈硬化との関連が注目されています。
つまり、同じ「悪玉コレステロール」でも、
「量だけではなく、どんなLDLが多いのか?」
という視点があるわけです。
5万人以上の日本人を調査
今回の研究では、健康診断を受けた日本人55,745人を対象に解析しました。
研究者は
・脂肪性肝疾患(SLD)の有無
・飲酒量
・LDL-C
・HDL-C
・中性脂肪
・sdLDL-C
などを調べました。
そして
sdLDL-Cが35mg/dL以上の場合を「高sdLDL-C」
として解析しています。
「脂肪肝+飲酒量が多い人」で最も高かった
結果として、高sdLDL-Cの割合が最も高かったのは、
「脂肪性肝疾患があり、なおかつ飲酒量が多い人」
でした。
その割合は76.4%でした。
つまり、このグループでは4人に3人以上が高sdLDL-Cに該当していたことになります。
ここだけを見ると
「脂肪肝もお酒もsdLDL-Cを上げるのでは?」
と思いますよね。
しかし、詳しく解析すると興味深い違いが見えてきました。
脂肪肝との関係は「通常の脂質」で説明できる部分があった
研究者は、年齢や性別、BMIなどの影響を考慮したうえで、
さらに
・通常のLDL-C
・HDL-C
・中性脂肪
なども統計的に調整しました。
すると、「脂肪性肝疾患と高sdLDL-Cの関連」は弱くなりました。
つまり、脂肪性肝疾患の人でsdLDL-Cが高くなりやすい理由の一部は
「中性脂肪など、一般的な脂質異常も一緒に起きているから」
と説明できる可能性があります。
一方で「飲酒」との関連は残った
ここが今回の研究で特に興味深いところです。
通常のLDL-C、HDL-C、中性脂肪などを考慮したあとでも、
「飲酒量と高sdLDL-Cの関連」は比較的強く残りました。
つまり飲酒は、「一般的なコレステロール検査だけでは完全には説明できない脂質プロフィール」
と関連している可能性があります。
簡単に言えば、健康診断でLDL-Cだけを見て、
「悪玉コレステロールは正常だから、お酒を飲んでいても大丈夫」
とは必ずしも言えないということです。
なぜお酒と脂質が関係するの?
アルコールは肝臓で代謝されます。
そして肝臓は
・脂肪酸
・中性脂肪
・コレステロール
・リポタンパク
などの脂質代謝において非常に重要な臓器です。
そのため、飲酒習慣によって肝臓での脂質代謝が変化すれば、血液中を流れるリポタンパクの「量」だけでなく「粒子の性質」にも影響する可能性があります。
今回の研究は、その可能性をsdLDL-Cという指標から示したものと考えられます。
ただし、この研究だけで具体的なメカニズムまで証明されたわけではありません。
「脂肪肝=お酒の飲みすぎ」とは限らない
もう一つ知っておきたいのが「脂肪性肝疾患(SLD)」です。
脂肪肝というと、「お酒を飲みすぎている人の病気」と思われがちです。
しかし、実際にはそうとは限りません。
肥満、内臓脂肪、インスリン抵抗性、食生活などの代謝異常と関連して肝臓に脂肪が蓄積するケースもあります。
つまり、「お酒を飲まない=脂肪肝にならない」というわけではありません。
今回の研究では、この脂肪性肝疾患と飲酒を分けて解析したからこそ、それぞれとsdLDL-Cとの関連の違いが見えてきたわけです。
健康診断では何を見ればいい?
今回の結果から「全員がsdLDL-Cを測定すべき」とまでは言えません。
ただ、健康診断を見るときに、「LDL-Cだけ正常ならOK」と考えないことは重要です。
特に
・飲酒量が多い
・中性脂肪が高い
・脂肪肝を指摘されている
・腹囲が増えている
・血糖値が高い
・HDL-Cが低い
といった人では、脂質代謝全体を評価する必要があります。
血圧や血糖、体重、腹囲、肝機能なども含めて考えることが大切です。
「お酒を飲むと必ずsdLDL-Cが上がる」とは言えない
今回の研究を解釈するうえで、非常に重要な注意点があります。
この研究は「横断研究」です。
横断研究とは、ある時点で
「お酒をどのくらい飲んでいるのか?」
「sdLDL-Cが高いのか?」
を調べ、その関連を見る研究です。
そのため、「飲酒したからsdLDL-Cが上昇した」という原因と結果までは証明できません。
例えば、飲酒量が多い人には
・食生活
・喫煙
・運動習慣
・睡眠
・体重
・その他の生活習慣
などの違いが存在する可能性があります。
統計的にさまざまな要因を調整していても、すべての影響を完全に取り除くことはできません。
それでも今回の研究が重要な理由
今回の研究の面白いところは、
「脂肪肝も飲酒も同じようにsdLDL-Cと関連する」
という単純な結果ではなかったことです。
通常の脂質指標まで考慮すると
脂肪性肝疾患
→ sdLDL-Cとの関連が弱くなる
一方で
飲酒
→ sdLDL-Cとの関連が比較的残る
という違いが確認されました。
つまり
「同じ高sdLDL-Cでも、背景にある代謝状態は同じではない可能性がある」
ということです。
お酒を飲む人が意識したいこと
今回の研究だけを理由に、「お酒は一滴も飲んではいけない」と結論づけることはできません。
一方で、「LDL-Cが正常だから飲酒量は気にしなくてもいい」という考え方も適切ではありません。
飲酒習慣がある人ほど
・LDL-C
・HDL-C
・中性脂肪
・血糖
・肝機能
・腹囲
・血圧
などを総合的に見ることが重要でしょう。
健康診断は一つの数字だけを見るのではなく、
「自分の代謝状態を全体として見る」
ことが大切です。
まとめ
今回の研究では、日本人55,745人を対象に、脂肪性肝疾患と飲酒が、高sdLDL-Cとどのように関連するのか?が調べられました。
高sdLDL-Cの割合が最も高かったのは、脂肪性肝疾患があり、飲酒量も多い人で、76.4%でした。
しかし、通常のLDL-C、HDL-C、中性脂肪などを考慮すると、脂肪性肝疾患とsdLDL-Cの関連は弱くなる」一方で、
「飲酒と高sdLDL-Cの関連は比較的残る」という違いが確認されました。
つまり「健康診断でLDL-Cがそれほど高くない=飲酒による脂質リスクも問題ない」
とは限らない可能性があります。
ただし、これは横断研究なので、飲酒がsdLDL-Cを直接増加させると証明したわけではありません。
今回の研究から言えるのは
「お酒を飲む人ほど、LDL-Cという一つの数字だけではなく、脂質・肝臓・血糖・体組成などを含めて健康状態を見ることが大切」
ということでしょう。
参考文献
Alcohol and Steatotic Liver Disease Exhibit Divergent Associations with High Plasma Small Dense LDL-C Concentration.
J Clin Endocrinol Metab. 2026 Jun 19:dgag234.
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