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ダイエットで筋力が落ちる人・落ちない人の違いは?最新研究で分かった「筋肉を守る仕組み」




「ダイエットすると筋肉も落ちる」こんな話を聞いたことがある人は多いと思います。

実際、食事量を減らして体重を落とすと、脂肪だけではなく筋肉などの「除脂肪組織」も減少することがあります。実際目の当たりにした経験もあります。


さらに問題なのが、筋力まで低下してしまう可能性があること。

せっかく体重が減っても

・疲れやすくなった

・階段がつらくなった

・トレーニング重量が落ちた

・以前より身体を動かしにくくなった

となってしまえば、必ずしも理想的な減量とは言えません。


では

「同じように痩せても、筋力を維持できる人とできない人がいるのはなぜなのか?」

2026年に掲載された研究では、この疑問を「筋肉の中で起こっている遺伝子レベルの変化」から調べています。


そもそも、なぜダイエットすると筋肉まで減るの?

体重を減らすためには基本的に

消費エネルギー > 摂取エネルギー

という状態を作る必要があります。


いわゆる、カロリー赤字(エネルギー不足)です。

すると身体は、蓄えているエネルギーを使って不足分を補います。


もちろん体脂肪は重要なエネルギー源になります。

しかし減量中に失われるのは脂肪だけとは限りません。


筋肉などを含む除脂肪組織も減少する可能性があります。


そのためダイエットでは

「何kg痩せたか」だけではなく、「何を減らして、何を残せたのか」

を見ることが非常に重要です。


今回の研究は「筋肉量」ではなく「筋力」に注目した

今回の研究で面白いのがここです。

研究者たちは「減量すると筋肉量がどれくらい減るのか?」

だけを見たわけではありません。


注目したのは、筋力を維持できる人と、維持できない人の違いです。


研究には、CALERIE試験

という大規模な研究のデータが使用されました。


CALERIEは、健康で肥満のない成人を対象に、長期間のカロリー制限が身体にどのような影響を与えるかを調べた2年間のランダム化比較試験です。


今回の研究では、その中でも主に体重が減少していた最初の12カ月間を分析しています。


今回解析されたのは、健康で肥満のない成人198人。

元となったCALERIE試験では、21〜50歳、BMI 22.0〜27.9kg/m²の成人が対象となっていました。


研究者は

・体重の変化

・膝を伸ばす筋力

を測定。


さらに一部の参加者では、実際に筋肉の組織を採取しています。


そして

「減量しても筋力を維持できた人では、筋肉の中でどの遺伝子の働きが変化していたのか?」

を詳しく分析しました。


約半数は「体重の減少に対して筋力を維持できていた」

結果は非常に興味深いものでした。


198人のうち

96人(48.5%)

では、体重減少量から予測される以上に筋力が維持、あるいは改善されていました。


簡単に言えば

「痩せたからといって、全員が同じように筋力を失うわけではなかった」

ということです。


ただし、ここには非常に重要な注意があります。

この研究は、「96人全員の絶対的な筋力が上がった」という意味ではありません。


体重減少量を考慮したときに、予測されるよりも筋力を維持・改善できていた

という評価です。

ここは研究結果を正しく理解するうえで重要です。


では、筋力を守れた人は何が違った?

ここからが今回の研究の中心です。

参加者のうち42人では、筋肉の遺伝子発現まで詳しく調べられました。


遺伝子というと、「生まれつき決まっているもの」というイメージがあるかもしれません。

しかし今回調べたのは、単純な「どんな遺伝子を持っているか」ではありません。


その遺伝子が筋肉の中で、どの程度働いているのか

という「遺伝子発現」です。


例えば同じ設計図を持っていても、どのページをどれだけ使うか

によって、細胞の働きは変わります。


研究では、筋力変化と関連する151個の遺伝子が見つかりました。


筋力維持と関係していた4つの重要な遺伝子

その中でも特に重要な候補として

HSP90AA1

EIF3A

EIF5B

H3C1

という遺伝子が特定されました。


名前だけを見ると、かなり難しいですよね。

なので、ここから出来るだけ簡単に説明します。


HSP90AA1|筋肉の「タンパク質の品質管理」に関わる

今回特に注目されたのが、HSP90AA1です。

この遺伝子は、HSP90(Heat Shock Protein 90:ヒートショックプロテイン90)

というタンパク質に関係しています。


ヒートショックプロテインとは、簡単に言えば

細胞内のタンパク質を正常な状態に保つために働く“メンテナンス役”

のようなものです。


筋肉はトレーニングやエネルギー不足など、さまざまなストレスを受けています。

そのような状況でも

・タンパク質の構造を維持する

・傷ついたタンパク質への対応を助ける

・細胞内のタンパク質を正常に機能させる

といった働きに関係しています。


今回の研究では、このHSP90AA1の変化が、減量中の筋力維持と強く関連する候補として浮かび上がりました。


「筋肉を作る仕組み」も筋力維持と関係していた

もう一つ注目したいのが、EIF3AとEIF5Bです。

これらは、タンパク質を作る「翻訳」という仕組みに関係する遺伝子です。


私たちの筋肉は常に

タンパク質を作る

タンパク質を分解する

また新しく作る

という入れ替えを行っています。


筋肉を維持するためには

必要なタンパク質を適切に作り続けることが重要です。


今回、こうしたタンパク質合成に関連する遺伝子が筋力維持と関連していたことは、

カロリー不足の状態でも、筋肉のタンパク質を維持・更新する能力が筋力保持に関係する可能性を示しています。


さらに「細胞の増殖・免疫・タンパク質分泌」も関係していた

研究者は151個の遺伝子を一つずつ見るだけでなく、

「どんな生物学的な仕組みがまとめて動いていたのか?」

も分析しています。


その結果

・細胞増殖に関係する経路

・免疫調節に関係する経路

・タンパク質分泌に関係する経路

・細胞周期を管理する仕組み

などが筋力維持と関連していました。


つまり、「筋肉を守る=筋タンパク質合成だけ」

という単純な話ではない可能性があります。


減量というエネルギー不足の環境に対して

細胞がどうストレスに対応するか

タンパク質をどう維持するか

免疫・炎症反応をどう調節するか

細胞の機能をどう維持するか

といった複数の仕組みが関係している可能性があります。


「筋肉量」と「筋力」は同じではない

ここも今回の研究から考えるうえで重要です。

筋肉量が多いほど筋力も高くなりやすいのは確かです。

しかし、

筋肉量=筋力

ではありません。

筋力には、

・筋肉量・神経系の働き・筋線維の性質・筋肉内部の構造・力を発揮する技術

など、さまざまな要因が関係しています。

だからこそ、

減量で多少除脂肪量が減ったとしても、必ず同じ割合で筋力が低下するわけではありません。

実際、CALERIEではカロリー制限によって体重・除脂肪量・絶対筋力などが低下しましたが、体重に対する相対筋力では維持または改善が確認されています。


じゃあ「筋力を落とさず痩せる方法」が分かったの?

ここは慎重に考える必要があります。

今回の研究から、「HSP90AA1を増やせば筋力を維持できる」とはまだ言えません。


今回分かったのは

「筋力を維持できた人では、こうした遺伝子・生物学的経路の変化が関連していた」

ということです。


つまり

HSP90AA1が変化した

だから筋力が維持された

という因果関係を証明した研究ではありません。


著者らもHSP90AA1について、今後さらに研究する価値のある候補

として位置づけています。


この研究は「筋トレ方法」を調べた研究でもない

ここも誤解しないようにしましょう。


今回の研究は

「週3回筋トレすると筋力を維持できる」

「タンパク質を1.6g/kg摂れば筋力が落ちない」

といったことを検証した研究ではありません。


あくまで、カロリー制限による減量中に筋力を維持できた人の筋肉内部の違いを調べています。


したがって

「この研究で見つかった遺伝子を活性化するために○○を食べればいい」

といったところまで話を広げることはできません。



ダイエット中こそ筋トレが重要

今回の研究自体が筋トレの効果を検証したわけではありません。

ただし、減量中に筋肉・筋力を守るという目的を考えるなら

レジスタンストレーニング(筋トレ)

は非常に重要な要素になります。


ダイエットというと

「食事を減らして、有酸素運動でカロリーを消費する」

ことだけに意識が向きがちです。


しかし、減量中だからこそ、身体に「この筋肉・筋力は必要ですよ」という刺激を与える

という考え方も大切です。


さらに、十分なタンパク質適切なエネルギー赤字レジスタンストレーニング十分な睡眠・回復

などを組み合わせ、脂肪を落としながら筋肉・筋力をできるだけ維持する

という減量を目指すことが重要になります。



今回の研究の限界

今回の研究にも重要な限界があります。

まず、元になったCALERIE試験の対象は、肥満のない健康な21〜50歳の成人です。


そのため

肥満者

高齢者

糖尿病患者

アスリート

などに、そのまま結果を当てはめることはできません。


さらに、遺伝子発現まで詳しく分析できたのは、

42人です。

そして今回見つかった151個の遺伝子やHSP90AA1などは、

「筋力維持との関連」

を示したものです。


因果関係を証明したものではありません。

今後

「本当にこれらの経路が筋力維持を引き起こしているのか?」

「運動や栄養によってこれらの経路を変えられるのか?」

を検証する研究が必要です。


まとめ|ダイエットの目標は「体重を落とす」だけではない

今回の研究では、カロリー制限による減量を行った健康な成人を分析し、

「体重が減っても筋力を比較的維持できる人では、筋肉の中で何が違うのか?」

を調べました。


198人のうち、96人(48.5%)は、体重減少量を考慮したときに筋力を比較的維持・改善できていました。


さらに42人の筋肉を詳しく調べたところ、151個の遺伝子が筋力変化と関連。

特に

HSP90AA1

EIF3A

EIF5B

H3C1

などが重要な候補として見つかりました。


また

・細胞増殖

・免疫調節

・タンパク質分泌

・細胞周期の調節

などの生物学的経路も関係していました。


つまり

減量中の筋力維持には、単純な「筋肉量」だけでは説明できない、筋細胞内部のさまざまな適応が関係している可能性がある

ということです。


ただし現段階では

「この遺伝子を増やせば筋力を守れる」というところまでは分かっていません。


一般の人が今回の研究から持ち帰るべきポイントはもっとシンプルです。

ダイエットの成功を「何kg減ったか」だけで評価しないこと。


体脂肪を減らしながら、筋肉をできるだけ残す。筋力をできるだけ残す。日常生活の身体機能を守る。

ここまで含めて、「良い減量」と考えることが重要なのではないでしょうか。


参考文献

Moore N, Bareja A, Ross LM, et al.Biological Pathways of Strength Preservation During Calorie Restriction-Induced Weight Loss Among Adults Without Obesity.Obesity (Silver Spring). 2026.DOI: 10.1002/oby.70293


※本研究はCALERIE試験の二次解析です。研究結果は遺伝子発現と筋力維持の「関連」を示したものであり、特定の遺伝子が筋力維持を直接引き起こすことを証明したものではありません。

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