筋トレ前のカフェインは本当に効く?最新メタ解析が示す「パワー向上効果」
- 髙橋 大翔
- 11 分前
- 読了時間: 6分

「筋トレ前にコーヒーを飲むと力が出る気がする」「カフェインって本当にトレーニングに効果あるの?」
こうした疑問に対して、複数の研究結果をまとめて分析した“メタアナリシス”によって、かなり明確な答えが示されました。
本記事では、筋トレ中の“パワー(瞬発的な力)”に対するカフェインの効果について、最新の科学的知見をわかりやすく解説します。
この研究は何を調べたのか?
この論文は、「カフェインを一時的に摂取することで、筋トレ中のパワー発揮は高まるのか?」を検証した研究を集め、統計的にまとめたものです。
ポイントは「急性摂取」
毎日飲み続ける話ではない
トレーニング前にカフェインを摂るケースが対象
つまり、「筋トレ前の1杯」に意味があるのかを検証した研究です。
パワーとは何か?(簡単に解説)
この研究で注目された「パワー」とは、
重さ × 速さ
瞬間的にどれだけ強く・速く力を出せるか
という能力です。
パワーが重要な筋トレ種目
ベンチプレス
スクワット
ジャンプ
クリーンなどの爆発的動作
筋肥大やスポーツパフォーマンスにおいて、非常に重要な要素とされています。
研究の方法
システマティックレビュー&メタアナリシス
この論文では、
ランダム化比較試験(信頼性が高い研究)
カフェイン vs プラセボ(偽物)
レジスタンストレーニング中のパワー測定
を行った研究を厳選し、全体としてどの程度の効果があるのかを分析しています。
初期段階では2700以上のカフェインに関する研究がヒットしましたが、最終的には12の研究に絞られています。
この12件の研究は、筋トレまたはレクリエーションレベルの活動を行っている20~29歳の230人が対象で、用いられたカフェインの摂取量は3~12mg/kgの範囲です。
1件を除きテストの60分前に摂取し、1件は15分前に摂取していた。日常的なカフェイン摂取量は1件のみ632mg/日と高用量だったが、その他は0~6mg/kg/日の範囲ということが分かっています。
主な結果
カフェインは中枢のアデノシン受容体拮抗、カルシウム動員の増加、運動ニューロン発火の増大などを通じて筋力発揮とパワーを高めると説明されている。
既存のメタ解析で報告された最大筋力(1RM)への効果量(SMD ≈ 0.17–0.20)よりも、本研究でのパワー指標(0.21〜0.40)の効果量の方がやや大きいことから、「カフェインは最大筋力以上に“スピード・パワー系”のパフォーマンスに効きやすい」と結論づけている。
実務的インプリケーション
レジスタンストレーニングにおいて、試合や高強度セッション前のカフェイン単回摂取は、動作速度とパワーを小〜中程度ながら一貫して向上させる戦略になりうる。
効果を最大化するポイントとして、
低〜中用量(おおよそ 3〜6 mg/kg 以内)
日常のカフェイン摂取量をやや抑えて「耐性をつけすぎない」ことが推奨されると述べられている。
カフェインは筋トレ中のパワーを有意に高める
結果として、トレーニング動作の平均速度はカフェイン摂取によって有意に向上(小さめ〜中等度の効果量)しました。
また平均のパワー出力もカフェイン摂取で有意に向上(小さいが一貫した効果)しました。
サブグループ解析では
・性別
→平均動作速度の向上は男性でより顕著。女性でも有意な改善はあるが効果量は小さめ。
・カフェイン用量
→低用量(≦3 mg/kg)、中用量(>3〜≦6 mg/kg)、高用量(>6 mg/kg)のいずれでもパワー指標は有意に改善し、「必ずしも高用量が必要というわけではない」ことが示唆された。
・習慣摂取量
→1日あたり <3 mg/kg の低習慣摂取者で効果が大きく、≧3 mg/kg/日 の中〜高習慣摂取者では効果が減弱。→ 慣れによる耐性(が影響している可能性が示唆されています。
・負荷(%1RM)
→低負荷(<30%1RM)、中負荷(30〜70%1RM)、高負荷(>70%1RM)のすべてで平均動作速度、平均パワー出力は有意に改善し、パワー志向の軽〜中負荷トレから高負荷トレーニングまで幅広く有効。
上肢・下肢とも有意な向上が認められ、特定筋群に限られた効果ではなかった。
なぜカフェインでパワーが上がるのか?
論文で示唆されている主なメカニズムは以下です。
① 中枢神経の覚醒作用
脳の疲労感を軽減
「きつい」という感覚を抑える
② 筋収縮の効率向上
神経から筋肉への信号が強くなる
力を素早く発揮しやすくなる
③ 集中力・反応速度の向上
動作がキレやすくなる
フォームが安定しやすい
結果として、同じ重量でも、より速く・強く動かせる状態が作られます。
効果の大きさは「万能」ではない
重要なのは、この研究が過剰な期待を否定している点です。
効果は「小〜中程度」
全員が同じ反応を示すわけではない
カフェイン耐性がある人では効果が弱い場合もある
つまり、
👉 カフェインは魔法のサプリではない👉 あくまで“上乗せ効果”
という位置づけです。
筋トレをする人への実践的な示唆
この研究を踏まえると、筋トレ前のカフェイン活用は以下のように考えられます。
● パワー系トレーニングの日に向いている
高重量
スピード重視
記録更新を狙う日
● 毎回使う必要はない
依存や耐性を防ぐため
「ここぞ」という日に使うのが合理的
● 食事・睡眠が土台
カフェインだけで成果は出ない
日常の食事・休養が最優先
ダイエット目的の筋トレでも意味はある?
間接的ですが、意味はあります。
パワーが出る→ トレーニング強度が上がる→ 消費エネルギー・筋刺激が増える
その結果、筋トレの質が上がり、ダイエット効率が高まる可能性があります。
ただし、「痩せるために大量に摂る」という考えはこの研究からは支持されません。
まとめ
カフェインと筋トレパワーの関係
カフェインは筋トレ中のパワーを有意に向上させる
特に爆発的・スピード系動作で効果が出やすい
効果は現実的な範囲(小〜中程度)
食事・睡眠・トレーニング習慣が最優先
「筋トレ前のカフェインは、正しく使えば“質を高める補助ツール”になる」
それが、このメタアナリシスから得られる最も妥当な結論です。
引用文献
Yuchun Xiao, et al. Effects of acute caffeine intake on muscular power during resistance exercise: a systematic review and meta-analysis.Frontiers in Nutrition. 2025 Oct 7;12:1686283.
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