股関節が硬いと膝・腰・足首を痛める、は本当だった。運動連鎖から見るケガの仕組み
- 髙橋 大翔
- 3 日前
- 読了時間: 6分

札幌市豊平区中の島にあるパーソナルジムR. Physio labスタッフの髙橋です!
今回は身体の痛みや怪我に関しての解説をしようと思います。
「膝が痛い」「腰が痛い」「足首をよく捻る」。
そんな悩みを抱えるアスリートの多くが、痛みの出ている場所だけを治そうとします。しかし理学療法士として臨床で選手を診ていると、実は痛みの本当の原因が、まったく別の場所にあるケースが少なくありません。
その代表例が「股関節」です。股関節の動きが硬くなっている、つまり可動域が制限されていることが、膝や腰、足首のケガにつながっていることが、複数の研究で明らかになっています。
今回は、股関節の可動域制限がなぜ他の関節のケガに関係するのか、その仕組みを研究データとともにわかりやすく解説します。
そもそも股関節の可動域制限とは何か
股関節の可動域とは、股関節がどれだけ大きく、スムーズに動かせるかを表すものです。特に重要なのが「内旋(うちにひねる動き)」と「外旋(そとにひねる動き)」という、股関節をひねる方向の動きです。
スポーツの動作では、走る、跳ぶ、方向を変えるといった場面で、この股関節のひねる動きが常に使われています。ところが、長時間のデスクワークや同じ動作の繰り返し、筋肉の硬さなどによって、この可動域が知らないうちに狭くなっている選手が非常に多く見られます。
股関節の可動域制限が膝のケガ(ACL損傷)を引き起こす仕組み
膝の靭帯のケガの中でも特に重症なものに、ACL損傷(前十字靭帯損傷)があります。ジャンプの着地や急な方向転換で膝が内側に入り込むようにして受傷することが多く、選手生命に関わる大きなケガです。
ある研究では、ACL損傷を経験した選手と、ケガをしていない選手の股関節の可動域を比較しました。その結果、ACL損傷を経験した選手は、股関節をひねる動き(内旋と外旋を合わせた可動域)が平均60.3度だったのに対し、ケガをしていない選手は平均72.6度と、はっきりとした差が見られました。
なぜこのような差が生まれるのでしょうか。股関節の柔軟性が不足していると、本来股関節で吸収されるはずのひねる動きが、股関節では吸収しきれずに、その分の負担が膝や足首に流れてしまいます。股関節が硬い分、膝が余計にひねられてしまうというイメージです。この積み重ねが、ケガのリスクを高めると考えられています。
また別の研究では、ジャンプの着地動作を調べたところ、股関節の内旋の可動域が大きい選手ほど、着地の瞬間に膝が内側に崩れ込む動き(ニーイン)が大きくなる傾向も報告されています。可動域は「大きすぎても」「小さすぎても」それぞれ異なるリスクにつながるということです。つまり重要なのは、ただ柔らかければ良いということではなく、股関節と膝がバランスよく連動して動けているかどうかです。
着地動作における股関節と膝の連動性
スポーツ中のケガの多くは、ジャンプの着地の瞬間に起こります。この着地の瞬間、股関節と膝がしっかり曲がることで、地面から伝わる衝撃をうまく吸収することができます。
ところがある研究によると、着地の際に股関節や膝の曲がりが浅い選手ほど、膝が横方向に大きくブレる動きと、それに伴う負担が増加することがわかりました。
さらに疲労が蓄積した状態では、股関節や膝の曲がりが浅くなり、足首が内側に傾く動きが増えることで、着地の姿勢がさらに崩れやすくなることも報告されています。試合の終盤や連戦が続く時期にケガが増えやすいのは、こうした疲労による動作の変化も一因と考えられます。
股関節の可動域制限と腰痛の関係
股関節の硬さは、膝だけでなく腰にも影響します。
インラインホッケーの選手を対象にした研究では、股関節を外側にひねる動きや、ひねる動き全体の可動域が小さい選手ほど、過去1年間で腰痛を経験している割合が高いことがわかりました。
これは、体の使い方の「代償」という考え方で説明できます。
本来、体をひねる動作は股関節が中心となって行われるべきものです。
しかし股関節が硬くて動かせない場合、体は無意識のうちに、その分の動きを別の場所、特に腰の骨(腰椎)で補おうとします。腰椎は本来大きくひねる動きには向いていない部位のため、この代償が続くと腰に大きな負担がかかり、痛みや損傷につながってしまうのです。
股関節の可動域制限は競技によって傾向が異なる
股関節の可動域制限の程度や特徴は、実は競技によって傾向が異なることもわかっています。
アメリカンフットボール選手を対象にした研究では、ポジションによって股関節や膝の動かし方に違いがあり、股関節の動きが制限されている選手ほど、膝に負担のかかる動きが起こりやすいという関連が示されています。
長時間同じ姿勢を取ることが多いポジションほど、股関節の硬さが特徴的に現れやすいということです。
このように、股関節の可動域制限は「柔軟性がない」という単純な問題ではなく、競技特性や体の使い方のクセが積み重なった結果として現れます。だからこそ、自分の競技や動作のクセに合わせた評価と対策が必要になります。
まとめ:痛い場所だけでなく、原因の場所を見つけることが大切
膝が痛い、腰が痛い、足首を捻りやすい。こうした症状があるとき、多くの方は痛みの出ている場所だけをケアしようとします。
もちろんそれも大切ですが、今回紹介したように、股関節の可動域制限が根本的な原因になっているケースは決して少なくありません。
痛みを繰り返さないためには、「なぜそこに負担が集中しているのか」という視点を持つことが重要です。股関節、膝、腰、足首はそれぞれ独立して動いているのではなく、ひとつながりの運動連鎖として体を支えています。
参考文献
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Greater hip internal rotation range of motion is associated with increased dynamic knee valgus during jump landing, both before and after fatigue. 2024.
Limited hip and knee flexion during landing is associated with increased frontal plane knee motion and moments. Clin Biomech. 2009.
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Position-Specific Hip and Knee Kinematics in NCAA Football Athletes. Orthop J Sports Med. 2015.
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