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睡眠時間で身体の老化は変わる?

21 時間前
読了時間: 8分


「睡眠時間が短いと身体に悪い」

という話は、多くの人が聞いたことがあると思います。

仕事や家事で忙しく、毎日5〜6時間しか眠れないという人もいるでしょう。


一方で、たくさん寝れば寝るほど健康に良いのでは?と思っている人もいるかもしれません。

では、実際のところ、睡眠時間は身体の老化とどのように関係しているのでしょうか?


2026年5月、世界的な科学誌に掲載された研究では、睡眠時間と脳や心臓、肝臓などの老化指標との関係を調べました。


その結果、睡眠時間が短すぎる人だけでなく、長すぎる人でも、身体の老化指標が高い傾向が確認されました。

今回は、この研究を分かりやすく解説します。


そもそも「身体の老化」はどうやって調べるのか

私たちの年齢には、大きく分けて2つの考え方があります。

1つ目は「暦年齢」です。


これは、生まれてから何年経ったのかという一般的な年齢です。

例えば、40歳の人なら暦年齢は40歳です。


もう1つが「生物学的年齢」です。

こちらは、身体の状態から推定される年齢です。


同じ40歳でも、臓器の状態や血液中の物質には個人差があります。

そこで研究者は、MRI画像や血液検査のデータなどから、身体がどの程度の年齢に相当する状態なのかを推定します。


今回の研究では、このような方法を使って、複数の臓器や身体のシステムの老化を評価しました。

ただし、生物学的年齢はあくまで統計モデルによる推定値です。

「身体年齢が45歳と出たから、実際に5年寿命が縮んでいる」という意味ではありません。


今回の研究はどんな内容?

研究では、イギリスの大規模健康研究である「UKバイオバンク」などのデータを使用しました。

UKバイオバンクには、約50万人の健康情報が登録されています。


今回の中心的な分析では、37〜84歳の中高年を対象に、睡眠時間と身体の老化指標との関係を調べました。


ただし、すべての参加者がMRI検査や血液中の詳細な測定を受けたわけではありません。

実際の分析人数は、測定項目によって異なります。


研究者は、主に次の3つの方法で老化を評価しました。


1つ目はMRIです。

脳や心臓、肝臓などの画像から、臓器の状態を調べました。


2つ目は血液中のタンパク質です。

血液には、身体のさまざまな働きに関係するタンパク質が含まれています。

その種類や量から、老化に関連する特徴を調べました。


3つ目は血液中の代謝物です。

代謝物とは、身体がエネルギーを作ったり、栄養素を利用したりする過程で生じる物質です。


これらの情報を組み合わせ、合計23種類の老化指標と睡眠時間の関係を分析しました。


結果① 睡眠時間と老化の関係は「U字型」だった

今回の研究で最も重要なのが、睡眠時間と老化指標の関係です。

研究では、23種類の老化指標のうち9種類で、統計的に明確なU字型の関連が確認されました。


U字型とは、簡単に言えば

睡眠時間が短い人では老化指標が高い

睡眠時間が中程度の人では老化指標が低い

睡眠時間が長い人では再び老化指標が高い

という関係です。


つまり、睡眠時間は短ければ短いほど悪いというだけでなく、長ければ長いほど良いわけでもなかったのです。


ただし、23種類すべてで同じ関係が確認されたわけではありません。

臓器や測定方法によって、関連の強さには違いがありました。


結果② 老化指標が最も低かった睡眠時間は6.4〜7.8時間

では、何時間くらい眠っている人の老化指標が低かったのでしょうか?

今回の研究では、老化指標が最も低くなる睡眠時間が、臓器や性別によって異なっていました。


その範囲は、6.4〜7.8時間でした。


つまり、今回の対象者では、おおむね6時間半〜8時間弱の睡眠時間で、老化指標が低い傾向がみられたということです。


ただし、ここは非常に重要です。

今回の研究は、

「6.4時間が最も健康に良い」

「7.8時間以上寝ると老化する」

と証明したわけではありません。


あくまで、研究対象者のデータから計算された値です。

また、臓器や性別によっても違いがあります。

そのため、全員に共通する理想の睡眠時間が決まったわけではありません。


結果③ 6時間未満と8時間超の睡眠は、病気や死亡リスクとも関連

研究者は、身体の老化指標だけでなく、病気や死亡との関係も調べました。

睡眠時間を大きく分けると


6時間未満の短時間睡眠

6〜8時間の睡眠

8時間を超える長時間睡眠

です。


その結果、6〜8時間の睡眠と比較して、短時間睡眠と長時間睡眠の両方が、さまざまな疾患や全死亡リスクの高さと関連していました。


全死亡リスクとは、原因を限定せず、あらゆる原因による死亡をまとめて評価したものです。

今回の研究では、うつ病や糖尿病などとの関連も調べられています。


ただし

「6時間未満の睡眠が直接病気を引き起こした」

「8時間以上眠ったから死亡リスクが上がった」

と証明されたわけではありません。

睡眠時間と病気の間には、さまざまな要因が関係している可能性があります。


なぜ睡眠時間が長い人でも老化指標が高いの?

ここは特に誤解されやすい部分です。

「長く寝ることも身体に悪いの?」

と思うかもしれません。


しかし、今回の研究だけで、長時間睡眠そのものが身体の老化を進めると判断することはできません。

例えば、もともと体調が悪い人では、睡眠時間が長くなる可能性があります。


睡眠の質が悪く、長時間寝ても十分に休めていない人もいるかもしれません。

また、病気や生活習慣などの要因が、睡眠時間と老化指標の両方に関係している可能性もあります。


つまり、長時間睡眠が老化を進めるという可能性だけではなく、身体の状態が睡眠時間に影響している

という可能性も考える必要があります。


今回の研究では遺伝情報を利用した分析も行われていますが、睡眠時間と老化・疾患の因果関係を完全に解明したわけではありません。


そのため、普段9時間眠っている人が、今回の研究を理由に無理やり7時間へ減らす必要があるとは言えません。


睡眠不足は脳だけでなく全身と関係する?

今回の研究の大きな特徴は、脳だけを調べたわけではないことです。

睡眠といえば

記憶力

集中力

眠気

疲労感


など、脳の働きとの関係をイメージする人が多いでしょう。

しかし今回の研究では、脳以外の臓器や血液中の物質についても調べています。


その結果、睡眠時間と老化指標の関係は、複数の身体システムで確認されました。

つまり、睡眠は脳だけでなく、身体全体の健康状態と関係している可能性があるということです。


ただし、今回の研究で「睡眠不足によってすべての臓器が老化する」と証明されたわけではありません。

臓器ごとに関連の強さが異なっていたことも重要です。


睡眠時間を増やせば身体は若返る?

今回の研究結果を見て、毎日5時間しか寝ていないから、7時間に増やせば身体年齢が若返るのでは?と思う人もいるかもしれません。


しかし、今回の研究からそこまでは言えません。

なぜなら、研究者が参加者の睡眠時間を強制的に変えて、その後の老化指標を比較した実験ではないからです。


例えば、5時間睡眠の人を7時間睡眠に変える→その状態を数年間続ける→実際に臓器の老化指標が改善するか調べるといった介入を行ったわけではありません。


そのため、睡眠時間を延ばすことで老化指標が改善するかどうかは、今回の研究だけでは分かりません。


ただし、睡眠不足を改善すること自体には、日中の眠気や疲労、生活の質などの面で意味があります。

今回の研究は、睡眠を健康管理の重要な要素として考えるための、さらに一つの根拠になるでしょう。


では、実際には何時間寝ればいいのか

今回の研究では、老化指標が最も低くなる睡眠時間が6.4〜7.8時間でした。

しかし、この数字だけを目標にする必要はありません。


一般的に成人の睡眠時間は、年齢や個人の必要量によって異なります。

また、睡眠では時間だけでなく、質も重要です。


例えば、7時間眠っていても

何度も目が覚める

朝起きても疲れが取れない

日中に強い眠気がある


という場合には、睡眠に問題がある可能性があります。

反対に、必要な睡眠時間には個人差があるため、単純に「7時間を超えたら寝すぎ」と考えるのも適切ではありません。


大切なのは、睡眠時間だけを数字で管理するのではなく、日中の体調や睡眠の質も含めて考えることです。



まとめ|睡眠は短すぎても長すぎても、老化指標と関連していた

2026年に掲載された今回の研究では、睡眠時間と身体の老化指標の関係を調べました。

その結果、23種類の老化指標のうち9種類で、睡眠時間とのU字型の関連が確認されました。


つまり、睡眠時間が短い人と長い人の両方で、老化指標が高い傾向があったということです。

また、老化指標が最も低くなる睡眠時間は、臓器や性別によって異なり、6.4〜7.8時間でした。


さらに、6時間未満や8時間を超える睡眠は、さまざまな疾患や全死亡リスクとも関連していました。

ただし、7時間眠れば若返る、8時間以上眠ると老化が進むという意味ではありません。


今回の研究で分かったのは、睡眠時間と身体の老化指標に関連があるということです。

睡眠時間を変えることで実際に老化を遅らせられるかどうかは、今後の研究が必要です。


それでも、今回の結果は、睡眠が単に疲れを取るためだけのものではなく、全身の健康状態と深く関係している可能性を示しています。


仕事や家事、運動などで忙しい毎日ですが、健康を考えるなら、食事や運動だけでなく、睡眠にも目を向けてみてはいかがでしょうか。


参考文献

The MULTI Consortium, O’Toole CK, Song Z, et al. Sleep chart of biological ageing clocks in middle and late life. Nature. Published online May 13, 2026.


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