筋トレはセット数を一気に増やしても大丈夫?トレーニング量を「120%増やした」最新研究から分かったこと

「筋肉を大きくしたいなら、トレーニング量を増やしたほうがいい」
筋トレをしている人なら、一度は聞いたことがあると思います。
実際、筋肥大を考えるうえで、「週に何セット行うか」というトレーニングボリュームは重要な要素です。しかし、ここで一つ疑問があります。
トレーニング量を増やせば増やすほど筋肉は成長するのでしょうか?
逆に、「急にセット数を増やしすぎると回復できなくなって、筋肥大が悪くなるのでは?」
という考え方もあります。
2026年に掲載された研究では、トレーニング経験者の週間トレーニング量を
普段より20%増やす場合と
普段より120%増やす場合を比較しました。
その結果は非常に興味深いものでした。
そもそも「トレーニングボリューム」とは?
筋トレにおける「ボリューム」とは、簡単に言えば、どのくらいの量のトレーニングを行ったか
を表すものです。日本語では総負荷量とも言います。
実際の研究やトレーニング現場では、
・セット数
・反復回数
・重量
・週あたりのトレーニング量
など、さまざまな方法で表されます。
筋肥大を目的とする場合、特に分かりやすいのが
「1つの筋肉を週何セット鍛えたか?」
という考え方です。
例えば大腿四頭筋に対して
スクワット3セット
レッグプレス3セット
を週2回行えば
単純計算では週12セット程度になります。
一般的には、ある程度まではボリュームを増やすことで筋肥大効果が高まる可能性があります。
しかし、どこまでも増やし続ければいいのかは別問題です。
今回の研究は「トレーニング経験者」が対象
今回の研究に参加したのは、18〜35歳のトレーニング経験がある男女25名です。
ここはかなり重要です。
筋トレ初心者ではありません。
普段からレジスタンストレーニングを行っている人を対象にしています。
研究期間は、8週間。
そして、この研究では非常に面白い方法が使われました。
自分の「右脚と左脚」で比較した
参加者は両脚を週2回トレーニングしました。
ただし
片方の脚→ 普段のトレーニング量から20%増加
もう片方の脚→ 普段のトレーニング量から120%増加
というように、左右で異なるボリュームを実施しました。
つまり、同じ人の身体の中で「少し増やした場合」と「一気に増やした場合」を比較した
わけです。
この方法には大きなメリットがあります。
人によって
・遺伝的な筋肉のつきやすさ
・食事
・睡眠
・生活習慣
・ホルモン環境
などは違います。
しかし同じ人の左右の脚なら、こうした個人差の影響をかなり小さくできます。
120%増というのは、普段のトレーニング量の120%を行った
という意味ではありません。ここは誤解しやすいところです。
普段より、+120%です。
例えば、普段ある筋肉を週10セット鍛えていた人なら、
20%増→ 約12セット
120%増→ 約22セット
というイメージです。
つまり高ボリューム側では、普段の約2.2倍までトレーニング量を増やしたことになります。
かなり大きな増加ですよね。
結果|どちらも筋肉は大きくなった
研究では、超音波を使用して、外側広筋の筋横断面積を測定しました。
外側広筋とは、太ももの前側にある大腿四頭筋の一部です。
簡単に言えば、「太ももの筋肉がどのくらい太くなったのか?」を調べたわけです。
その結果
20%増加した脚
120%増加した脚
のどちらでも、8週間後に筋横断面積が増加しました。
つまり、両方とも筋肥大したということです。
では「120%増」のほうが筋肉は大きくなった?
ここが今回の研究で最も重要なポイントです。
結果として、120%増加させたほうが20%増加より筋肥大した、という有意な差は確認されませんでした。
つまり
普段より20%増
↓筋肥大
普段より120%増
↓筋肥大
しかし
120%増
↓
20%増よりさらに大きく筋肥大
とはならなかったのです。
これは
「トレーニング量を大幅に増やせば、その分だけ筋肉が大きくなるわけではない」
可能性を示しています。
ボリュームを増やしすぎると逆効果?
今回の研究では、これも確認されませんでした。
研究者がもともと考えていた仮説の一つは
「トレーニング量を一気に増やしすぎると、筋肉の回復能力を超えてしまうのではないか?」
というものでした。
例えば
トレーニング刺激
↓
筋タンパク質合成
↓
筋肉が成長
というプラスの反応だけではなく
過剰なトレーニング
↓
タンパク質分解などが増える
↓
回復が追いつかない
↓
筋肥大が悪くなる
という可能性です。
しかし今回の研究では
120%増加させても、20%増と比較して筋肥大が明確に悪くなることはありませんでした。
つまり、「一気にボリュームを増やすと必ず筋肥大が止まる」
という結果でもなかったのです。
筋肉の中まで詳しく調べた
今回の研究が面白いのは、筋肉の大きさだけを測定したわけではないところです。
実際に参加者の筋肉から、筋生検(Muscle biopsy:マッスル・バイオプシー)を行っています。
簡単に言えば、筋肉の組織を少量採取して、内部で何が起きているのか調べた
ということです。
研究者は
・筋線維の大きさ
・サテライト細胞
・筋核
・タンパク質合成に関係するシグナル
・タンパク質分解に関係するシグナル
などを調べました。
「アナボリック」と「カタボリック」とは?
筋トレ界隈で
「アナボリック」
「カタボリック」
という言葉を聞いたことがある人もいると思います。
かなり簡単にすると
アナボリック
身体の組織を作る方向の反応
カタボリック
身体の組織を分解する方向の反応
です。
筋肉は常に、
作る
↓
分解する
↓
また作る
という代謝を繰り返しています。
そのバランスの積み重ねによって、長期的に筋肉が増えたり減ったりします。
今回の研究では、「120%もボリュームを増やしたら、分解側の反応が強くなってしまうのでは?」
という点まで調べたわけです。
分子レベルでも大きな違いはなかった
結果として、タンパク質合成やタンパク質分解に関連する多くの分子マーカーは、20%増と120%増で大きな違いがありませんでした。
つまり
120%増
↓
筋肉内部が強烈なカタボリック状態になる
↓
筋肥大が阻害される
という明確な結果は確認されませんでした。
一方で、
120%増
↓
アナボリックシグナルが大幅に増える
↓
さらに筋肥大する
という結果でもありませんでした。
ここが非常に重要です。
「多くやっても悪くならない」=「多くやるべき」ではない
今回の研究は非常に誤解されやすい内容です。
結果だけを見ると、「じゃあセット数は一気に2倍にしてもいいんだ」
と思うかもしれません。
しかし、それは違います。
今回分かったのは、120%増加させても、今回の条件では筋肥大が20%増より明確に悪くならなかった
ということです。
同時に、120%増加させても、20%増より明確に筋肥大が良くなったわけでもありません。
つまり
たくさんやった
↓
悪くならなかったと
たくさんやった
↓
やった分だけ得をした
は全く別の話です。
筋肥大には「費用対効果」も重要
例えば
週12セット
↓
筋肥大
週22セット
↓
ほぼ同程度の筋肥大
だったとします。
この場合、「22セットでも筋肥大できる」ことは分かります。
しかし、実際のトレーニングでは
・時間
・疲労
・関節への負担
・睡眠
・他の部位のトレーニング
・仕事や日常生活への影響
まで考える必要があります。
もし少ないセット数でほぼ同じ結果が得られるなら、少ないボリュームのほうが効率が良い
可能性があります。
今回の研究は、「高ボリュームは絶対にダメ」
とも、「高ボリュームが最強」とも言っていません。
「20セットを超えたら筋肥大しない」も言い過ぎ
筋トレでは、「1部位週20セットを超えると意味がない」といった話を聞くことがあります。
しかし、現在の研究から、全員に共通する明確な“20セットの壁”が存在するとまでは言えません。
トレーニング経験、種目、強度、セットの追い込み具合、回復能力などによって適切なボリュームは変わります。
今回の研究でも、普段のトレーニング量から120%増加させても、筋肥大が明確に悪化する証拠はありませんでした。
一方で、ボリュームを増やすほど筋肥大効果が比例して増えるわけでもありません。
重要なのは、「多ければ多いほど良い」ではなく、ボリュームを増やすほど追加で得られるメリットが小さくなる可能性があるという考え方です。
まとめ|セット数を大幅に増やしても「悪化しなかった」。でも「得もしなかった」
今回の研究では、18〜35歳のトレーニング経験者25名を対象に
普段のトレーニング量+20%と
普段のトレーニング量+120%を8週間比較しました。
結果は
+20%
筋横断面積が増加
+120%
筋横断面積が増加
しかし
+120%のほうが+20%より大きく筋肥大したという有意な差はありませんでした。
一方で
+120%にしたことで筋肥大が明確に悪化したわけでもありませんでした。
筋肉内部のアナボリック・カタボリック関連シグナルについても、多くの指標で大きな違いは確認されませんでした。
つまり今回の研究を一言でまとめるなら、トレーニング量を一気に増やしても筋肥大が邪魔されるとは限らない。しかし、たくさんやった分だけ筋肉が増えるわけでもないということです。
筋肥大を考えると、何セットまで耐えられるか?ではなく
「どのくらいのボリュームで十分な成長を得られるか?」
という視点も重要です。
ボリュームを増やすこと自体を目的にするのではなく、必要な刺激を確保しながら、回復できる範囲で少しずつ調整していく。
トレーニング経験者ほど、この考え方が重要になりそうです。
参考文献
Camargo JBB, Bittencourt D, Michel JM, et al.Large Increases in Resistance Training Volume Do Not Impair Muscle Hypertrophy or Anabolic-Catabolic Molecular Signaling in Trained Individuals.Journal of Applied Physiology. 2026;141(2):477-493.doi:10.1152/japplphysiol.00284.2026.PMID: 42461790.
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