筋トレをしている子どもは勉強もできる?約6万7,000人を調べた研究

「運動ばかりしていると、勉強する時間が減る」
「勉強ができるようになるには、運動より勉強時間を増やしたほうがいい」
このように考える人もいるのではないでしょうか?
しかし、運動と学業成績には、意外な関係があるかもしれません。
2025年に発表された研究では、中国の小学生・中学生・高校生67,281人を対象に、筋トレの頻度と学校の成績との関係を調べました。
その結果、筋トレを行う日数が多い生徒ほど、国語・数学・英語の成績が良い傾向が確認されました。
今回は、この研究から分かったことを分かりやすく解説します。
子供の筋トレと勉強の関係とは
研究対象となったのは、中国の小中高校生67,281人です。
平均年齢は13歳で、男子が約52%、女子が約48%でした。
研究者は、主に2つのことを調べました。
1つ目は、1週間に何日筋トレをしているか。
2つ目は、学校の成績です。
筋トレについては、腕立て伏せ、腹筋運動、ウエイトトレーニングなど、筋肉を鍛える運動を過去7日間に何日行ったかを質問しました。
学校の成績については、前学期の試験成績をもとに、国語・数学・英語の評価を回答してもらいました。
そして、筋トレをまったく行っていない生徒と、週1〜7日行っている生徒の成績を比較しました。
結果① 筋トレをしている生徒ほど国語の成績が良かった
まず国語の結果です。
筋トレをまったくしていない生徒と比較すると、週1日筋トレをしている生徒では、より良い成績に該当するオッズが11%高くなっていました。
さらに、筋トレの日数が増えるにつれて、その関連は強くなる傾向がありました。
週4日では42%高く、週6日では64%高いという結果でした。
ただし、週7日では40%高いという結果に下がっていました。
つまり、筋トレの頻度が多い生徒ほど成績が良い傾向はありましたが、毎日行えば最も成績が良くなるという結果ではありませんでした。
なお、ここでいう「42%高い」は、テストの点数が42%上がったという意味ではありません。
良い成績に該当するオッズが1.42倍だったという統計上の結果です。
結果② 数学の成績とも関連していた
次に数学です。
こちらも筋トレを行っている生徒ほど、良い成績に該当する傾向が確認されました。
筋トレをしていない生徒と比較すると
週1日では9%高く
週4日では39%高い結果でした。
一方で、週7日では24%高い結果となりました。
つまり、数学についても週4日程度までは筋トレ頻度が増えるほど良い成績との関連が強くなっていましたが、それ以上では必ずしも強くなりませんでした。
結果③ 英語の成績にも同じような傾向があった
英語についても、同様の関係が確認されました。
筋トレをしない生徒と比較すると
週1日では9%高く
週4日では31%高い結果でした。
さらに週5日では36%高くなっていました。
ただし、週7日では25%高い結果でした。
つまり、国語・数学・英語の3教科すべてで、筋トレの頻度と良い成績との間に関連がみられたのです。
なぜ筋トレと勉強の成績が関係するのか
ここで気になるのが、筋トレをすると頭が良くなるの?という疑問です。
運動と脳の働きについては、これまでにもさまざまな研究が行われています。
運動が注意力や記憶、物事を考えて判断する能力などに関係する可能性は、研究されているテーマの一つです。
また、運動習慣のある子どもは、睡眠や生活リズム、心理的な健康状態などにも違いがあるかもしれません。
ただし、今回の研究では、こうした仕組みを直接検証していません。
そのため、筋トレによって脳の機能が改善したから成績が良かった、と断定することはできません。
もともと生活習慣が整っている生徒が筋トレにも取り組んでいる可能性や、家庭環境などの別の要因が影響している可能性もあります。
単純に運動量が多いだけではない?
今回の研究で興味深いのは、筋トレ以外の運動量も考慮して分析していることです。
例えば、普段からよく走ったり、スポーツをしたりする生徒は、筋トレもしている可能性があります。
そのため、研究者は中強度から高強度の身体活動量に加えて、睡眠時間、スクリーンタイム、家庭の経済状況、保護者の学歴なども統計的に調整しました。
その後も、筋トレ頻度と成績の関連はおおむね残っていました。
つまり、単純に「運動している子どもだから成績が良い」という説明だけでは捉えきれない関連が確認されたわけです。
ただし、統計的に調整しても、すべての影響を取り除けるわけではありません。
では、勉強のために週4日筋トレをしたほうがいい?
今回の研究では、週4日程度まで筋トレ頻度が増えるにつれて、良い成績との関連が強くなる傾向がありました。
しかし、ここで注意が必要です。
今回の研究は、筋トレを週4日行わせて成績が変化するかを調べた実験ではありません。
すでに存在している筋トレ習慣と成績の関係を、ある時点で調べた研究です。
そのため
「週4日筋トレをすれば成績が上がる」
「週4日が勉強に最適な筋トレ頻度」
とは言えません。
また、今回調べられたのは筋トレを行った日数であり、1回あたりの時間や強度、具体的な種目の組み合わせまでは十分に評価されていません。
そのため、どのような筋トレが学業成績に最も関係するのかも、まだ分かっていません。
子どもの筋トレは取り入れてもいい?
子どもの運動というと、ランニングや球技をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、筋肉を鍛える運動も身体活動の一つです。
例えば
腕立て伏せ
スクワット
自分の体重を使った運動
適切に指導されたウエイトトレーニング
などがあります。
WHOの身体活動ガイドラインでは、5〜17歳の子ども・青少年に対して、筋肉や骨を強くする活動を週3日以上取り入れることが推奨されています。
ただし、これは健康のための身体活動に関する推奨であり、学業成績を上げるために週3日行うべきという意味ではありません。
子どもの運動では、年齢や発達段階に合った内容を選び、正しいフォームや安全性を重視することが大切です。
今回の研究で注意したいこと
今回の研究は約6万7,000人という大規模なデータを使用しています。
しかし、いくつかの限界があります。
まず、横断研究であることです。
横断研究とは、ある時点での運動習慣と成績の関係を調べる研究です。
そのため、筋トレが先だったのか、成績の良さが先だったのかは分かりません。
また、筋トレ頻度も学校の成績も自己申告でした。
実際の運動記録や学校の成績表を研究者が直接測定したわけではないため、回答に誤差が含まれる可能性があります。
さらに、対象は中国の小中高校生です。
日本の子どもや成人にも同じ関係があるとは限りません。
最も重要なのは、筋トレと学業成績の関連は確認されたものの、筋トレによって成績が向上するという因果関係は証明されていないことです。
まとめ|筋トレは勉強の邪魔になるとは限らない
今回の研究では、中国の小中高校生67,281人を対象に、筋トレの頻度と国語・数学・英語の成績との関係を調べました。
その結果、筋トレを行う日数が多い生徒ほど、良い成績に該当する傾向が確認されました。
特に週4日の筋トレでは、筋トレをしない生徒と比較して、良い成績に該当するオッズが
国語:42%高い
数学:39%高い
英語:31%高い
という結果でした。
ただし、これはテストの点数がその割合だけ上がったという意味ではありません。
また、週4日筋トレをすれば成績が向上すると証明されたわけでもありません。
それでも、今回の結果は、運動をすると勉強の妨げになるという単純な考え方を見直すきっかけになるかもしれません。
勉強と運動は、必ずしもどちらか一方を選ぶものではありません。
子どもの成長や健康を考えるうえでは、勉強時間だけでなく、適切な運動習慣を持つことも大切です。
今回の研究は、筋トレが身体だけでなく、学業面とも関係している可能性を示した興味深い結果と言えるでしょう。
参考文献
Cen Z, Zhang K, López-Gil JF, et al. Is muscle-strengthening exercise associated with better academic performance of Literacy, Mathematics and Language? Results from a cross-sectional study.
Journal of Exercise Science & Fitness. 2025;23(4):306–312.
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