筋トレは1回にまとめなくてもいい?最新研究が検証した「1セット×3回」と「3セット×1回」の違い

「筋トレしたいけど、まとまった時間が取れない」
仕事や家事、育児などで忙しい人なら、こんな経験があるのではないでしょうか?
例えば、「30分取れないから今日は筋トレをやめよう」
と考えてしまう人もいると思います。
もし、朝に1セット昼に1セット夜に1セットというように、筋トレを細かく分けても同じような効果が得られるとしたらどうでしょうか?
2026年に掲載されたランダム化比較試験では、筋トレを1回にまとめて行う方法と、1日の中で3回に分ける方法を直接比較しました。
結果は非常に興味深いものでした。
「運動はまとめてやるもの」という常識
一般的な筋トレでは
スクワット3セット
↓
ベンチプレス3セット
↓
ラットプルダウン3セット
というように、ある程度まとまった時間を確保してトレーニングします。
ジムに行けば、
30分
60分
90分
など、一定時間トレーニングする人が多いと思います。
これが一般的な、
Traditional Resistance Training(トラディショナル・レジスタンス・トレーニング:従来型レジスタンストレーニング)です。
一方、今回研究されたのが
Fragmented Resistance Training(フラグメンテッド・レジスタンス・トレーニング:分割型レジスタンストレーニング)です。
簡単に言えば、筋トレを1回にまとめず、1日の中で細かく分けて行う方法です。
「Exercise Snacking」という新しい考え方
この方法は、Exercise Snacking(エクササイズ・スナッキング)
という考え方から発展しています。
Snackingとは、「間食」という意味です。
つまりExercise Snackingは、運動を食事のように1回でまとめて行うのではなく、“間食”のように少しずつ行うという考え方です。
例えば
朝にスクワット
昼休みにスクワット
夜にスクワット
といった形です。
これまでエクササイズ・スナッキングでは、有酸素運動や階段昇降などが研究されてきました。
しかし、筋トレのセットを1日の中で分割しても、まとめて行う場合と同じ効果が得られるのか?
については、まだ十分な研究がありませんでした。
そこで今回の研究が行われました。
筋トレ経験者45人を3グループに分けた
今回の研究には、18〜25歳の男性45人が参加しました。
全員、少なくとも6カ月以上の筋トレ経験がある大学生です。
つまり、完全な筋トレ初心者ではありません。
参加者はランダムに、
① 分割トレーニング群
FRT:Fragmented Resistance Training
② 通常トレーニング群
TRT:Traditional Resistance Training
③ トレーニングを行わない対照群
の3グループに分けられました。
各グループ15人です。
研究期間は、8週間でした。
種目は「スミスマシン・スクワット」
今回使われた種目は、スミスマシンを使ったスクワットです。
トレーニング頻度は、週3回。
分割群と通常群で、重量回数総トレーニング量ができるだけ同じになるように設定されました。
つまり、「同じ量の筋トレを、どう配分するか?」を比較した研究です。
通常群は「20回×3セット」をまとめて実施
通常トレーニング群は、スクワット20回×3セットを1回のトレーニングでまとめて行いました。
セット間の休憩は、3分間。
つまり
20回
↓
3分休憩
↓
20回
↓
3分休憩
↓
20回
という、一般的な筋トレに近い方法です。
合計すると、60回のスクワットを行っています。
分割群は「20回×1セット」を1日3回
一方、分割トレーニング群も、1日の合計回数は60回です。
ただし
朝〜昼
20回×1セット
昼〜夕方
20回×1セット
夜
20回×1セット
というように、1セットずつ3回に分けて行いました。
それぞれのトレーニングの間は、最低1時間以上空けられています。
つまり比較したのは
通常群
20回+20回+20回をまとめて行う
分割群
20回を1日3回に分ける
という違いです。
重量は40%1RMから55%1RMへ
使用する重量も徐々に増やしていきました。
最初は、40%1RMからスタート。
その後2週間ごとに5%ずつ増やし、最後の2週間では、55%1RMまで上げています。
1RMとは、「正しいフォームで1回だけ持ち上げられる最大重量」です。
例えばスクワットの1RMが100kgなら
40%1RM=40kg
55%1RM=55kg
程度です。
つまり今回の研究では、比較的軽〜中程度の重量で20回行うトレーニングが採用されました。
結果① 最大筋力はどちらも大きく改善
まず評価されたのが、1RMスクワットです。
つまり、「スクワットで最大何kg持ち上げられるのか?」という最大筋力です。
8週間後、対照群と比較した改善量は
分割トレーニング
+20.59kg
通常トレーニング
+28.93kg
でした。
どちらのトレーニング群も、対照群より有意に改善しました。
では、「通常トレーニングのほうが8kgくらい大きく伸びているから、通常群の勝ちでは?」
と思うかもしれません。
しかし、分割群と通常群の直接比較では統計的な有意差はありませんでした。
つまり今回の研究では、「まとめて3セットやったほうが筋力が伸びる」とまでは言えなかった
ということです。
結果② 等尺性筋力も差なし
次に調べたのが、等尺性スクワット筋力です。
等尺性とは、関節を動かさずに力を発揮することです。
例えばスクワット姿勢で止まり、その位置で最大限力を出すようなイメージです。
対照群と比較すると
分割トレーニング
+27.89kgf
通常トレーニング
+35.24kgf
でした。
こちらも両方とも対照群より改善。
そして、分割群と通常群には有意差がありませんでした。
結果③ 筋持久力も同じように改善
さらに研究者は、筋持久力も調べています。
方法は、その時点の1RMの40%を使って「スクワットを何回続けられるか?」を測定するものです。
対照群と比較した改善量は
分割トレーニング
+9.97回
通常トレーニング
+14.11回
でした。
こちらも、どちらのトレーニング群も対照群より改善。
そして分割群と通常群の間には、有意差がありませんでした。
つまり「1セットずつ分けても意味がある」
今回の結果を非常にシンプルにすると、
最大筋力
分割でも改善
等尺性筋力
分割でも改善
筋持久力
分割でも改善
そして、いずれも「まとめて3セット」との統計的な有意差は確認されませんでした。
つまり、「3セット連続でやらないと筋トレの効果がなくなる」というわけではなさそうです。
少なくとも今回の条件では、同じトレーニング量を確保できれば、1日の中で分割しても筋力・筋持久力を高められる可能性があるということです。
さらに「楽しさ」は分割したほうが高かった
今回の研究には、もう一つ面白い結果があります。
研究者は、PACESという質問票を使って、「その運動をどのくらい楽しいと感じたか?」
も評価しました。
結果は
分割トレーニング
中央値 5.94
通常トレーニング
中央値 5.50
つまり、1セットずつ分けたほうが、参加者はトレーニングをより楽しいと評価したということです。
なぜ分割すると「楽しい」と感じる?
今回の研究だけで、その理由が完全に分かったわけではありません。
ただ、考えられる理由の一つは、1回あたりの負担が小さいことです。
通常群では
20回
↓
休憩
↓
20回
↓
休憩
↓
20回
と続けます。
当然、後半になるほど疲労します。
一方、分割群は
20回
↓
数時間休む
↓
20回
↓
数時間休む
↓
20回
です。
1回終われば、そのトレーニングは終了です。
心理的にも、「これから3セットやらなきゃ」
より、「とりあえず1セットだけやろう」
のほうが始めやすい人はいるでしょう。
ただし、これは研究結果から考えられる解釈であり、今回の試験がその心理的メカニズムまで証明したわけではありません。
忙しい人にはかなり使いやすい方法かもしれない
この研究が一般の人にとって面白いのは、「まとまった時間がない」という筋トレのハードルを下げられる可能性があることです。
例えば、「今日は30分取れないから筋トレできない」
ではなく
朝→スクワット1セット
昼→スクワット1セット
夜→スクワット1セット
という方法も選択肢になります。
自宅トレーニングなら
朝:スクワット
昼:腕立て伏せ
夜:ゴムバンドローイング
のように運動を生活の中に分散させる考え方もできます。
ただし、このように異なる種目を分割する方法そのものを今回の研究が検証したわけではありません。
あくまで今回直接検証されたのは、スミスマシン・スクワット20回×3セットを、まとめるか分割するかです。
「筋肉は合計セット数しか見ていない」とはまだ言えない
今回の研究を見ると、「結局、筋トレは1日の合計量さえ同じなら何でもいいんだ」
と思うかもしれません。
しかし、そこまで断定することはできません。
今回調べられたのは、筋力と筋持久力が中心です。
一方、筋肥大、つまり筋肉がどのくらい大きくなったかについては主要な評価項目ではありません。
そのため、「1セット×3回と3セット×1回では筋肥大も完全に同じ」とは、この研究からは言えません。
筋肥大を目的にしている人では、今後さらに研究が必要です。
1セット目の質を高く保てるメリットも考えられる
分割トレーニングには、理論上もう一つメリットがあります。
通常のトレーニングでは、
1セット目
↓
疲労
↓
2セット目
↓
さらに疲労
↓
3セット目
となります。
一方、数時間空ければ、
それぞれのセットを比較的回復した状態で始められます。
そのため、各セットのパフォーマンスを高く保ちやすい可能性があります。
ただし今回の研究では、トレーニング量を揃えたうえで20回を行っているため、「分割したことで各セットの質が高まり、それが結果につながった」とまで証明されたわけではありません。
ここは仮説として考える必要があります。
一方で、分割トレーニングにもデメリットはある
「じゃあ全部の筋トレを分割すればいい」というわけでもありません。
例えばジムで
朝にスクワット1セット
↓
昼にもう一度ジムへ
↓
夜にもう一度ジムへ
というのは、むしろ非効率です。
また、毎回、着替えるウォームアップする器具を準備する必要があるなら、まとめて行ったほうが楽でしょう。
分割トレーニングが使いやすいのは、自宅でできる運動や、生活の中ですぐ実施できるトレーニング
かもしれません。
こんな人には分割トレーニングが使いやすそう
今回の研究から考えると
まとまった運動時間を確保しにくい人
仕事が忙しい人
育児中の人
長時間の筋トレが苦手な人
「運動を始めるまで」が面倒に感じる人
などには、分割トレーニングは一つの選択肢になりそうです。
特に、「30分できないなら0分」
ではなく、「5分しかないなら5分やる」
という考え方に変えられるのは大きなメリットです。
ただし、この研究には重要な限界がある
今回の結果をすべての人に当てはめることはできません。
まず対象者は、18〜25歳の男性45人です。
さらに全員、6カ月以上の筋トレ経験者でした。
そのため
女性
高齢者
完全な筋トレ初心者
疾患を持つ人
でも同じ結果になるかは分かりません。
また研究期間は、8週間です。
半年、1年と続けた場合にも同じ結果になるかは分かりません。
さらに種目は、
スミスマシン・スクワットのみ。
ベンチプレスやラットプルダウン、腕のトレーニングなどでも同じ結果になるとは限りません。
まとめ|「30分取れないから今日はやらない」を変えられるかもしれない
今回のランダム化比較試験では、18〜25歳の筋トレ経験男性45人を対象に
分割トレーニング
20回×1セットを1日3回
通常トレーニング
20回×3セットを1回で実施
を8週間比較しました。
トレーニング量は同じで、週3回のスミスマシン・スクワットを行っています。
その結果
最大筋力→どちらも改善
等尺性筋力→どちらも改善
筋持久力→どちらも改善
そして、これらの指標では、分割群と通常群に統計的な有意差は確認されませんでした。
さらに、運動の楽しさは分割群のほうが有意に高いという結果でした。
つまり、筋トレは必ずしも「まとまった時間を作って一気にやる」必要はない可能性があります。
仕事が忙しい。
育児で時間がない。
30分、60分という時間を確保できない。
そんな人なら、「今日は時間がないから0セット」ではなく、「とりあえず今1セット」
という考え方でもいいのかもしれません。
大切なのは、「理想的なトレーニング時間を確保できるか」だけではなく、自分の生活の中で、どうすればトレーニングを積み重ねられるか。
分割トレーニングは、そのための新しい選択肢になりそうです。
参考文献
Zhai R, Yang K, Dai H, Wang Y, Jiang Y, Wu X, Wang L.Fragmented versus traditional resistance training: a randomized controlled trial on muscular strength, endurance, and enjoyment in recreationally trained young adults.Journal of Exercise Science & Fitness. 2026;24(4):200521.doi:10.1016/j.jesf.2026.200521.PMID: 42729992.
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