ジャンプとスプリントは「切り上げ方」で決まる?速度低下(ベロシティロス)の最新メタ分析

皆さんこんにちは!
札幌市豊平区パーソナルジムR.Physio labです!
スクワットのセット、「もう上がらない」という限界まで毎回追い込んでいませんか?
実はその「潰れるまで」が、ジャンプ力やスプリントの伸びを小さくしているかもしれません。
今回は2026年10月に発表された最新のメタ分析をもとに、アスリートの皆さんに向けて「セットの切り上げ方(やめ時)」の科学を解説します。
速度低下(ベロシティロス)とは
ベロシティベースドトレーニング(VBT)では、バーベルが動く速度を目安にトレーニングを管理します。
セットを続けると疲労で挙上速度は落ちていきます。
1レップ目の最速の速度から、何%速度が落ちたところでセットを終えるか。その割合が「速度低下率(ベロシティロス、VL)」です。
言い換えると「どれだけ追い込んだか」の数値化
・VL10%:速度が1割落ちたら終了。まだ余力がある状態で切り上げる
・VL20%:速度が2割落ちたら終了。中程度の追い込み
・VL40%以上:限界近くまで追い込む。従来の「潰れるまで」に近い
つまりVLは、「あと何回できたか」ではなく「どれだけ速度を落としたか」で追い込み度合いをそろえる指標です。
2026年のメタ分析が出した結論
Zhang らは、トレーニング経験者を対象とした12件のランダム化比較試験を統合し、3レベルメタ分析でVLの違いがジャンプとスプリントに与える影響を検証しました(Zhang et al., 2026)。
結論:低いVLの方が、ジャンプ・スプリントには有利
高いVL(深く追い込む)と比べて、低いVL(浅く切り上げる)の方が、ジャンプとスプリント全体で小さな有利な効果が示されました。
特に明確だったのは、カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)、10mスプリント、30mスプリントです。
一方で、スクワットジャンプ(SJ)と20mスプリントでは有意な差は確認されませんでした。
正直な注意点も書いておきます
この論文は、効果の大きさは「小さい」、エビデンスの確実性は低〜中程度と明記しています。
「低いVLが全ての場面で絶対に正しい」という話ではありません。スピード・パワー系のトレーニングでの有力な選択肢の一つ、というのが著者らの結論です。
なぜ「浅く切り上げる」と速さにつながるのか
理由は大きく2つ考えられます。
1つ目は、疲労の質です。
深く追い込むほど代謝的な疲労が蓄積し、セット後半は「遅い速度で粘る練習」になります。速く動く能力を伸ばしたいのに、遅い動きの反復が増えてしまうわけです。
2つ目は、神経系への刺激の質です。
ジャンプやスプリントは、短時間に大きな力を出す能力です。速度が高い状態でのレップを中心に積む方が、この能力への刺激としては特異的です。
目的が違えば、正解も違う
ここを誤解しないでください。深く追い込むトレーニング自体が悪いのではありません。
先行するメタ分析(Jukic et al., 2022)では、VLが高い方が筋肥大には有利で、最大筋力や筋持久力の伸びにはVLの違いによる差は見られませんでした。
一方で、ジャンプ、スプリント、軽い負荷に対する速度といった「速さ」系の指標では、低いVLが有利でした。
・筋肉を大きくしたい時期 → 深めの追い込みも選択肢
・試合期やスピードを伸ばしたい時期 → VLは低く(10〜20%程度)、キレを残す
・最大筋力を伸ばす時期 → VLにこだわり過ぎず、扱う重量と総負荷が軸
「どの時期に、何を伸ばしたいか」で切り上げ方を変えるのが、現時点での合理的な使い方です。
実践ポイント
・速度はデバイスやアプリで測れる時代です。主観の「きつくなってきたら」ではなく、速度の数字で切り上げる基準を作りましょう
・スピード系の日はVL10〜20%を目安に。「あと2〜3回できそう」で終える感覚です
・同じセッション内でも、メイン種目(スクワット等)は低VL、補助種目で筋肥大を狙うなら深めのVLと、種目ごとに使い分けてOKです
・速度が1レップ目から出ない日は、その日のコンディション自体が落ちているサイン。重量を落とす判断材料にもなります
まとめ
・速度低下率(VL)は「どれだけ追い込んだか」を速度の落ち幅で数値化した指標
・2026年のメタ分析では、低いVLがジャンプ(CMJ)と10m・30mスプリントで小さな有利な効果を示した(効果は小さく、確実性は低〜中程度)
・筋肥大では深い追い込みに分があるなど、目的によって最適なVLは変わる
「限界までやれば伸びる」は、半分正解で半分は思い込みです。
何回挙げたかではなく、どの速度で、どこで切り上げたか。アスリートのトレーニングこそ、感覚ではなく数字で管理する価値があります。
種目の選択や負荷設定で迷ったら、身体の構造と競技特性の両方を見られる理学療法士にご相談ください。
引用文献
1. Zhang J, et al. Effects of different velocity loss thresholds during resistance training on jump and sprint performance in trained populations: a systematic review and three-level meta-analysis. Front Physiol. 2026 Oct 6. doi: 10.3389/fphys.2026.1893020
2. Jukic I, et al. The Acute and Chronic Effects of Implementing Velocity Loss Thresholds During Resistance Training: A Systematic Review, Meta-Analysis, and Critical Evaluation of the Literature. Sports Med. 2022.
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