肥満対策は「体重を減らすだけ」では不十分?除脂肪量と生活習慣病リスクの関係
- 髙橋 大翔
- 8月4日
- 読了時間: 7分

札幌市豊平区中の島にあるパーソナルジムR. Physio labです!
今回は除脂肪体重に関しての解説をしようと思います。
ダイエットでは、体重の数字に注目されることが多いでしょう。
「体重が何kg減ったか」「BMIがどれくらい下がったか」
これらは健康状態を評価するうえで重要な指標です。
しかし、体重だけでは、体の中で何が減ったのかまでは分かりません。
脂肪が減ったのか。
筋肉が減ったのか。
あるいは、水分や骨などを含む除脂肪量が減ったのか。
2026年に発表されたレビューでは、過体重・肥満の成人において、除脂肪量(Fat-Free Mass:FFM)が少ないことと、さまざまな代謝性合併症との関連が調べられました。
今回の研究は、「体重を減らすこと」だけでなく、減量中に体の中の筋肉を含む除脂肪量を維持する重要性を考えるうえで、注目される内容です。
除脂肪量(FFM)とは?
除脂肪量とは、体重から体脂肪を除いた部分のことです。
除脂肪量には、主に次のような組織が含まれます。
・筋肉
・体内の水分
・骨
・臓器
つまり、FFMは「筋肉量」と完全に同じ意味ではありません。
ただし、成人の体組成を考える際には、筋肉量がFFMの重要な構成要素になります。
そのため、FFMが少ないという結果は、筋肉量が少ない状態と関連している可能性があります。
除脂肪量が少ないと、どのようなリスクと関連していたのか
今回のレビューでは、低FFMと複数の体重関連合併症との関係が分析されました。
主な結果は次の通りです。
2型糖尿病
低FFMの人は、2型糖尿病のリスクが高いことと関連していました。
統合されたリスク比は、RR 1.46でした。
これは、低FFM群では、比較対象群よりも2型糖尿病のリスクが約46%高かったことを示します。
ただし、これは「FFMが少ないことが糖尿病を直接引き起こした」という意味ではありません。
今回の研究には観察研究が含まれているため、因果関係は断定できません。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとの関連は、特に大きい結果でした。
統合オッズ比は、OR 4.48でした。
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加えて、
・血圧の上昇
・血糖値の異常
・中性脂肪やHDLコレステロールの異常
などが重なり、心血管疾患のリスクが高くなる状態です。
今回の結果では、低FFMとメタボリックシンドロームの間に強い関連がみられました。
心血管疾患
心血管疾患についても、低FFMとの関連が確認されました。
統合リスク比は、
RR 2.03
でした。
これは、低FFM群で心血管疾患のリスクが約2倍だったことを示します。
ただし、この結果も関連を示したものであり、低FFMだけが原因とは限りません。
年齢、身体活動量、食事、体脂肪量、既存の病気など、複数の要因が関係している可能性があります。
脂肪肝
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)についても、低FFMとの関連がみられました。
統合リスク比は、
RR 2.24
でした。
低FFM群では、脂肪肝のリスクが約2.2倍高いという結果です。
なぜ筋肉を含む除脂肪量が重要なのか
骨格筋は、体を動かすためだけの組織ではありません。
筋肉は、食事から摂取した糖を取り込み、エネルギーとして利用する重要な器官です。
筋肉量が少ない場合、糖を取り込む能力が低下し、インスリンの働きが悪くなる可能性があります。
また、筋肉量の低下は、
・身体活動量の低下
・基礎的な身体機能の低下
・運動量の減少
・脂肪の蓄積
などにつながる可能性もあります。
その結果、糖代謝や脂質代謝に悪影響が生じることが考えられます。
ただし、今回のレビューでは、低FFMと合併症の関連が示されたものの、詳しいメカニズムを証明したわけではありません。
「体重が減った=健康になった」とは限らない
減量によって体重が減っても、その内訳は人によって異なります。
例えば、同じ5kgの減量でも、
Aさん:脂肪を4kg減らし、除脂肪量を1kg減らした
Bさん:脂肪を2kg減らし、除脂肪量を3kg減らした
では、体組成の変化が大きく異なります。
体重だけを見ると、どちらも5kg減っています。
しかし、筋肉を含む除脂肪量を多く失った場合は、筋力や身体機能の低下につながる可能性があります。
そのため、減量では、「何kg減ったか」だけでなく、「何を減らしたか」にも目を向けることが重要です。
減量中に筋肉を守るためにできること
減量中の除脂肪量を維持するためには、次のような取り組みが重要です。
1.レジスタンストレーニングを行う
筋肉に適切な負荷をかけることで、減量中の筋肉量や筋力を維持しやすくなります。
筋トレは、体重を減らすためだけではなく、減量中に筋肉を守るためにも重要です。
2.たんぱく質を十分に摂取する
たんぱく質は、筋肉を構成する材料です。
減量中はエネルギー不足によって筋肉が減少しやすくなるため、食事全体のエネルギー量だけでなく、たんぱく質の摂取量も確認する必要があります。
ただし、必要な量は、年齢、体重、運動量、健康状態によって異なります。
3.極端な食事制限を避ける
短期間で大幅な体重減少を目指すと、脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪量も失いやすくなる可能性があります。
体重を急激に減らすよりも、継続できる範囲で食事と運動を調整することが重要です。
4.体重だけでなく体組成も確認する
体重の変化だけでは、脂肪と除脂肪量の変化を区別できません。
可能であれば、
・体脂肪率
・骨格筋量
・筋力
・腹囲
・血糖値や血中脂質
なども総合的に確認するとよいでしょう。
今回の研究で注意したい点
今回のレビューでは、低FFMと複数の合併症との関連が示されました。
しかし、いくつかの注意点があります。
まず、研究間でFFMの測定方法が異なっていました。
また
・FFMの絶対量(kg)
・体重に対するFFMの割合
・BMIで補正したFFM
は、同じ意味を持つ指標ではありません。
例えば、体重が大きい人は、筋肉量の絶対値も多くなる場合があります。
そのため、「FFMが多ければ多いほど健康」と単純に考えることはできません。
さらに、研究間のばらつきも大きかったため、今回の結果を個人の健康リスクにそのまま当てはめることはできません。
まとめ
今回のレビューでは、過体重・肥満の成人において、低い除脂肪量が
・2型糖尿病
・メタボリックシンドローム
・心血管疾患
・脂肪肝
のリスク増加と関連していました。
この結果は、肥満対策を「体重を減らすこと」だけで評価するのではなく、体組成にも注目する必要があることを示しています。
減量では、脂肪を減らしながら、筋肉を含む除脂肪量をできるだけ維持することが重要です。
そのためには
・適切なレジスタンストレーニング
・十分なたんぱく質摂取
・極端な食事制限を避ける
・体重だけでなく体組成や筋力も確認する
といった取り組みが役立つ可能性があります。
「体重を減らす」だけではなく、「脂肪を減らし、筋肉を守る」
これが、健康的な体重管理を考えるうえで重要な視点といえるでしょう。
引用文献
Dejenie TA, Fahey PP, Mannan H, Ariya M, Atlantis E. The Role of Fat-Free Mass in Weight-Related Complications: A Rapid Review and Meta-Analysis. Obesity Reviews. 2026; e70202. DOI: 10.1111/obr.70202.
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